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【石垣島Creative Laboレポート 】vol.5「日本各地のクリエイティブ」by高橋俊宏さん(後編)

「クリエイティブで島を盛り上げる」課題と展望

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昨年11月下旬からはじまった石垣島クリエイティブラボの目的は、「クリエイティブで島を盛り上げる」ためのヒントを、ゲストスピーカーの講義や参加者同士のディスカッションで見つけていくこと。『Discover Japan』編集長の高橋俊宏さんが「日本各地のクリエイティブ」を語った第5回目の後半では、石垣島Creative Flag(以下、ICF)クリエイターや、一般参加の参加者が、講義を通して感じたことを発表。全5回のまとめとして見えてきた、島のクリエイティブ活動における課題と展望とは。

 

「物理的に遠い」「人材が少ない」という課題

島は消費地となるマーケットから遠いため、実行力のある人材が島外に出てしまい、島を盛り上げられる若者層が減少してしまうということが課題に挙がります。

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「石垣島は圧倒的に遠いなと感じます。東京と地方の2拠点生活をしている人もいますが、陸路で移動できる本土の田舎に充分な魅力があれば、新幹線や車で行けた方がいいと思いますよね。人に来てもらわなければいけないけど、飛行機でないと来れない距離。石垣島には楽園的なイメージもありますが、クリエイティブと言ったときに、距離に打ち勝つだけの利点が生み出せるのかなと思います」(アーティスト)

「島の高校生は職業観が乏しいと感じるんです。将来の夢を聞くと、美容師、看護師、公務員とか、名前の付いてる職業がほとんど。理由を聞くと『親や兄弟がやってるから』。島は職業の種類が他地域と比べて少ないし、大学もないので20〜30代が少なく、周りにキラキラしてる大人のモデルが少ないからなのかなと感じます。実際に面白いことやろうとして、実行してるのは島の人じゃなく移住者が多いと思いますし。混ざり合う方が刺激になると思うけど、それは一部しかいないと感じています」(高校教師)

「高校のころは石垣から出たくてしょうがなかったし、出るのが当たり前みたいな感じでした。中学のころに初めて絵を習いに行ったときの先生の刺激がすごくて、それがきっかけでデザインにいきたいなと思いました。石垣の良さを知ったのは東京に出てから。いずれ石垣に帰ろうと思っていたから「学ぼう」という意識で行って帰ってきて、親のお土産屋を継いでいます」(ロゴデザイナー)

 

「人口」「規模」が小さく、クリエイティブにふれる機会が少ない

クリエイティブに携わる人口が少なく、作品発表の場も少ないため、クリエイティブに触れられる場所がないことも課題であると参加者は言います。

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「人口が少ないのもデメリットかなと思います。他地域には高専があったり、ロボットを作るような面白い大人がたくさんいたりするんですが、石垣では子どもたちがクリエイティブに接する機会が少ないと感じています」(映像・アプリ制作)

「高校生のころに大体の夢を考えてはいたんですが、どうやったらそこに辿り着くのか、ルートが探しにくくて、進学してから考えてもいいのかなとも思っていましたが、それではやはり遅いんです。公務員だとか、安定を勧める親の方が多いと思いますが、もっといろんな選択肢があることを、もう少し早い段階から教えられたらと思います。今はネット環境もありますが、(ラボのような)こうした場で実際に会って感じ取ることができれば、道標になるんじゃないかと思います」(観光業)

 

ひきこもりがちによる「交流不足」も課題

クリエイティブに専念するあまり自分の世界に閉じこもり過ぎたり、発信・交流の機会が少ないためうまく仲間や社会と交流できないことも課題。

「島では圧倒的に交流が足りないと感じる。都会では毎週末どっかで展覧会やってたりオープニングパーティーやってたりでそういう情報がなんとなく集まっているが、島では作らないと起こらないんじゃないかと思う。ラボに限らずこんな交流があちこちでできていくのが求められてると感じた」(司会)

 

伝統にかたくなになるあまり、変化に対応しにくい

閉鎖的になりがちな島の特性から、良いものを持っていてもうまく発信できず、新しいものを享受しにくいことも課題のひとつ。

「ここにいる皆さんが高校生のときってどういうことを考えてたのかな、と思ったりしました。本当に島の子たちは硬くて、さらに大人はもっと硬いんです。高橋さんが『本物には背景があって、いかにモダンに見せていくか』とおっしゃっていましたが、石垣の伝統に携わっている人たちにはそこが足りないのかもしれません。モダンにすると身売りというか、魂を売るように思ってしまう。伝統を守るのも大切だけど、本当の形は崩さずに遊びみたいなもので変えてくことも必要なのかなと思いました」(教師)

「僕は生まれたころから芸能文化が身近にある島のディープな村で生まれ育ちました。大学で東京に出て音楽を始めて、在学中に帰省する中で島の魅力に気づき、25才で戻ってきて三線を習い始めました。八重山民謡は方言だと分かりづらいから僕の言葉で曲にしていこうと、八重山のことを作詞作曲して歌で発信するのをコンセプトに始めました。ギターと三線を使ってやってるんですが、もともと三線やってる人たちには「また変なこと始めやがって」「やめなさい」と。クリエイティブだからといっても、批判もたくさんあります」(ミュージシャン)

 

クリエイティブだけでは食べていけない

クリエイティブだけではなかなか食べていけない。そのこと自体がクリエイティブへの無理解を生み、島でクリエイティブを生業にすることを遠ざけてしまうという課題も。

「クリエイティブが仕事になるのには難しいところがあると思っています。島外のお客さんをいきなり見つけるのは難しいし、島内には企業が少ないのでお金を出してくれる人が少ない。また、仕事が入ってきたときに任せられる人もいないんですよね。たとえばアプリのコード書くのが忙しくなったときに、書ける人がいなかったり」(映像・アプリ制作)

「正直なところ、島で音楽をやってくのは難しいなと実感しています。一流のミュージシャンが島に来てライブをしていたりもするんですが、ほとんどお客さんが入らなかったり。(テレビに出ていたりする人以外は)あまりお客さんが入らないんです」(ミュージシャン)

 

島の経済動向のなかでクリエイティブをどう生かすか

観光需要が好調な石垣島ゆえに起こる問題と、観光業におけるクリエイティブの利活用についても意見が出ました。

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「僕の地元はもっと過疎化が進んでるんですが、石垣の変化は気になります。移住して1年で開発などもすごい速さで進んでいて、内地で見るような風景と変わらなくなっている気がします」(ダイビングインストラクター)

「八重山諸島の観光PRをしているんですが、課題は冬場の誘客が難しいこと。やはり移動手段が飛行機か船しかないので、(交通アクセスの利便性に)打ち勝つ魅力を拾ってPRすることが大切かなと思います。私は石垣出身だけど分からないものも多いんです。講義を通して、生み出すことがクリエイティブだと学んだので、いろんな文化やものづくりを吸収して、発信していければと思います」(観光業)

「石垣の魅力を外にPRするのは大事だと思います。(高橋さんのプレゼンで紹介された)尾道のホテルもすごい。ああいったことが石垣でもできたらいいなと思うし、見せ方だなと思いました」(ロゴデザイナー)

「島の人の全員、観光を推奨するかというとそうではないんです。僕の村の豊年祭とかはいわゆる秘祭というやつで、村の人以外に見せるためにやってない。急激に観光化されると伝統文化の破壊も起こってしまいます」(ミュージシャン)

 

島のクリエイティブの可能性と自身の活動について

「課題についてはまだ見つかっていないので、(ラボのような)こういう機会を定期的に持てたらいいなと思います。自分自身は高校のころにデザインを目指して長野の予備校に通っていたんですが、東京で仕事をするデザイナーがきてくれたり、大学受験じゃない学びが出来て、そこで地元の良さを学んで東京に出れたのが大きかったです。5万人弱の島でできるか分からないですが、美術でも音楽でも目指している子どもたちに、島の中で教えてあげられるような場所ができてもいいのかなと思います」(グラフィックデザイナー)

「インターネットの世界は、地球規模で作って地球規模で売る、いわゆる地産地消と言われてます。その地球規模の反対として、石垣にはすごいつながりがあるような気がしていますが、それがなかなか見つけられない。少なくともネットと何かを組み合わせれば何かができるとかそういうことじゃなくて、マルチタレント的な人だとか、その人にしかできないようなものが本当に残っていくのかなと。そこで自分がどういうことができるのか、すごく考えますね」(文筆家)

「石垣に8年住んで『これできる人知ってるよ』『あの人はどう?』という繋がりから、仕事ができるようになってきたところがあります。ICFのメンバーになって、チームみたいな雰囲気も楽しいけれど、これから石垣がどんどん変化していく中で、クリエイター同士どういう風なつながりを持ってやっていけたらいいのかなと考えています」(デザイナー)

「これだけのメンバーがいて、真剣にやればできることがたくさんあるので、自分としてももっと厳しくやっていこうと思いました。5年ほど前から高校生と商品開発やってるんですけど、島の子ってすごいんです。こんなキラキラした子どもが日本にいるんだっていうのを毎回感じてるし、先生たちはそのままいけるって後押ししてあげたらいいと思います」(事務局スタッフ)

「事業を始めて1年半、石垣でクリエイティブで何ができるかという漠然としたなか、東京や台湾でのPRを含めて模索しながらやってきました。ラボを始めるきっかけは人材育成だったんですが、毎回、僕ら自身が学んでる部分もありました。今後も同じような形で進めていき、より実践的にやってけたらと思っているので、ぜひ参加していただけたらと思います」(事務局スタッフ)

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「観光化したら良いという意見もあれば、望まない意見もあるように、こういう機会に自分の中の課題を発表してみることで初めてわかることもあると思います。自分の課題は自分だけのものじゃなく、この島の課題だけでもないことに気づくことが大事。それをクリエイティブなマインドを持ってどう切り替えていくかっていうのを気づく機会をもっと増やしていくのが大事なのではとすごく思いました。今回、出てきた課題を逆転の発想で利点と考えたら、案外答えは近くに転がっているかもしれないですよね」(司会)

「僕は『人の出会い』かなと思います。人との繋がりのなかで雑誌も作られていて、人に出会って話していくなかで、『それいいね』というアイデアをもらって、形にしています。(第5回前半の)パリの話も、実は『パリ行きたいよね?』『パリに店あったらかっこよくない?』という話に始まって、そういう話をしているうちに、ある日突然、話がきてお店ができたりするんです。だから、何かやるときは気楽に考えて、でもやるときはしっかりと。先入観なくいろんな人に話をしてみて、その人の心を引き出して、自分の力にするような。まずは、人の出会いですね」(ゲストスピーカー 高橋さん)

 

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さまざまな分野で活躍するゲストスピーカーに示唆に富むお話をいただいた全5回のラボでは、全ゲストから共通した感想をいただきました。それは「石垣島はすでに魅力がたっぷり詰まっているので、地域活性化には有利」ということ。

そのことを象徴するかのように、ゲストのみなさんは日中、ICFクリエイターのアトリエを巡り、夜は島酒やヤギ汁を愉しみ……と、短い滞在期間中でも島を満喫されたご様子。第1回目から課題としてピックアップされていた「つながりをいかにつくるか?」についても、ラボ自体が引き寄せたゲスト、事務局、参加者たちとの間で、新たなつながりが芽生えつつあると言えそうです。

「こうした会を続けていきたい」という参加者の要望も多かったラボはこれで終わりではなく、ここで出たアイデアやヒントをもとに次の展開を目指していきます。今後のICFの動向に注目です。

 

(文・前花麻子/写真・中西康治)