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【石垣島Creative Laboレポート 】vol.5「日本各地のクリエイティブ」by高橋俊宏さん(前編)

第5回目のゲストスピーカーは、「日本の魅力、再発見」をテーマにした雑誌『Discover Japan(ディスカバージャパン)』の統括編集長・高橋俊宏さん。誌面づくりを通して全国各地の「良いもの」に触れ、地方活性化にも積極的に取り組む高橋さんに、自身の体験や日本各地の事例についてお話しいただきました。

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高橋氏はまず参加者に尋ねます。「『Discover Japan』をご存知の方はいらっしゃいますか?」————ほぼ全員が挙手すると、「うれしいです。さっきも本屋さんに確かめに行ったらちゃんとあったから、安心したんです(笑)」と高橋さん。日本文化のバイブル的雑誌としての呼び名も高いこの雑誌を7年前に創刊した経緯について語ります。

 

北欧デザインに出会い、気づいた日本の魅力

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日本の伝統工芸、伝統芸能、食文化、風土などの毎回異なるテーマで日本の魅力を紹介する『Discover Japan』が創刊するきっかけは、実は「北欧」にあったと高橋さんは言います。 「雑誌『北欧スタイル』の取材のため、北欧在住の著名デザイナー、ハンス・J・ウェグナー氏の自邸を訪問したとき、彼の妻に『あなたの国の方が素晴らしいものがいっぱいあるのに、何しに来たの』と叱られたんです。邸宅内を見渡すと、蓑、ぼんぼり、こけし……と、日本の民具がありました。日本から遠く離れた国で慕われている日本の伝統文化に出会い、思いがけずその魅力に気づかされ、よその国のいいものを褒める前に、まず自分の国のいいものを紹介しなきゃいけないと思ったんです」(高橋さん)。

 

日本の魅力はどこにあるかというと、地方にある

北欧で日本の魅力に気づいた高橋さんは、その後『Discover Japan』を創刊。雑誌づくりを通して日本各地にある「良いもの」に出会います。「日本にはすばらしいモノがあって、世界に誇れる食文化がある。それを何が作ってるかというと、風土です。地域性からバラエティに富んだものができる。日本の魅力はどこにあるかというと、地方にあるんです」(高橋さん)。続いて、石垣島のヒントになるクリエイティブを活用した3つの地域活性事例を紹介します。

 

  • 地域の人を巻き込んだまちづくりの事例

産業振興のための尾道デニムプロジェクト、古民家をリノベーションしたみなとの宿、サイクロードの基点として魅力を強化・発信した「ディスカバーリンクせとうち」の事例。「クリエイティブがあるからこそ人が動くし、クリエイティブが街の役に立つ」(高橋さん)。

 

  • 食をテーマに場を生かした事例

石垣島や佐渡島などで開かれた「日本一贅沢な野外レストラン(DINING OUT)」の事例。食を通じて地方に残された美しい自然や伝統文化、歴史などをクリエイターらの手で再編集し、新たな価値を見出す地域振興プロジェクトは、「クリエイティブがあるからこそ付加価値が生まれる」(高橋さん)。

 

  • ものづくりを通して地域の魅力を発信した事例(富山県高岡市の事例)

富山県高岡市では、鋳物や漆器などの工芸都市で行われるクラフトコンペで地域のモノ作りのレベルアップをはかる。また、愛でるだけでなくそれを使って配膳したり(食と工芸の合わせ技)、工場見学などを行うクラフトツーリズムも実施。「観光客をつかまえるために竹やりを持って戦うんじゃなく、豊かな地域をどう磨いてって、それをしつらえて網に入ってもらうかだと思います」(高橋さん)。

 

クリエイティブの力で地域やものの魅力を発信

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日本各地で実施されているプロジェクトに参加者も興味深々。続いて、高橋さんはクリエイティブを使っていかに地域やものの魅力を発信するか、誌面づくりや、それに付随するプロジェクトのなかで実践している方法を紹介します。

 

<クリエイティブな切り口で見せる>

  • 背景にあるストーリーを伝える(本物には背景がある。その物語をクリエイティブ力で発信することで、興味をひく)
  • 細部にこだわる(数カット、美しい角度で、重量や細かいデータも盛り込んでイメージしやすく)
  • 時代の流れに合わせた価値観を取り入れる(西洋デザインとのコラボなどで、これまでになかった斬新な見せ方を)
  • 伝統工芸のような重いものこそ軽く、モダンに(愛でるだけでなく、使えるものへ。読者の近くへと落とし込む)
  • 使い方を指南する(読者が使いたくなるアイデアを紹介)

 

<クリエイティブでコトをおこす>

高橋さんも属する地場産業を広げるためのユニット「シンケン」の事例。ものづくり、流通、店づくり、PR、経営(ブランディング)と、プロを集めたチームを作り、それぞれの強みを活かす。

 

<地域ブランドをブランディング>

例)新潟県五泉市発で日本製ニットを復活させる取り組み

  • アパレルと雑貨の隙間を狙い、それまでになかったもの(この事例の場合はポンチョ)を作る
  • 覚えてもらいやすいよう「雪国だからこそ現代の蓑を作ろう」というストーリーを設定
  • 服飾店、雑貨店のどちらにも置いてもらえるよう、売り場までイメージしたプロダクトデザイン
  • 雑誌等の誌面で特集し広くPR

 

<メディアを活用した宿づくり>

例)「葉っぱ」の町・徳島県上勝町で宿をプロデュース

  • 予算をかけずに空間を演出するため、インテリアやアメニティ、料理などに季節の植物の“葉”を活用
  • 地元の魅力を散りばめるため地元の薬草を使った料理を提供し、器も地元の作家に製作を依頼
  • 宿を誌面で紹介し、その情報をつかってパンフレットを作成

 

<日本を飛び出し、パリで攻める>

例)パリにオープンしたセレクトショップ「Discovr Japan」でテストマーケティング

  • パリの日本ブームのなかで、あまり伝わっていない地場産業や伝統工芸などの良いものを情報発信する場として活用
  • パリで話題になることで、アジアや日本での評価があがることから「逆輸入」を狙う
  • 目利き人は「ものの背景」を知りたがるため、この場を活用してしっかり紹介
  • ものへの興味から「行ってみたい」につなげ、インバウンドへとつなげる

 

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「クリエイティブでの地域づくり」で重要なことは、「自分たちの価値を見つける」「本物へ磨きあげる」「価値の発信」の3つが重要であり、ものづくりや情報発信のどちらでもユーザーをイメージすることが大事だと高橋さんは言います。 講義の最後には、高橋さんから「石垣島には魅力的な素材がたくさんあって、恵まれた場所。クリエイティブの力で価値を高めてどーんとやるには、断然有利じゃないかなと思います。ぜひ日本の地域代表としてがんばってください!」と、石垣島へのエールが送られました。 講義の後半では、11月下旬からはじまった全5回の講義を通して感じたことを参加者全員が発表。第5回の後半にて紹介します。

 

(文・前花麻子/写真・中西康治)