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【石垣島Creative Laboレポート 】vol.4「世界に挑戦するクリエイティブ」by太刀川英輔さん

第4回目の石垣島クリエイティブラボ(1/27)のゲストスピーカーは、デザインファーム「NOSIGNER(ノザイナー)」代表で、経済産業省が主催するクールジャパン戦略のコンセプトディレクターなども務める太刀川英輔さん。

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太刀川さんはまず、参加者に「疑問に思っていること」について質問。参加者からは、「デザイナーとしての最初の一歩は何だったか」「本土と離島では規模が違うが、離島にいながらどのように発信していけばいいのかアプローチ法を知りたい」などの疑問が挙がり、これらを紐解くべくプレゼンがはじまりました。

 

プレゼン内容は、太刀川さん自身がこれまで培ってきた経験からピックアップした10の事例。「クリエイティブで島を盛り上げる」ためのヒントとしてお話しいただきました。

 

<太刀川さんが提示する10のキーワード>

1.やったことがあるかどうかは気にするな

2.プロのクオリティを持て

3.理想から逆算せよ

4.周囲は全て学べ

5.体験のシフト

6.似た状況を探せ

7.適切なチーム

8.問いを拡大せよ

9.我欲を超える大きな欲を持て

10.自分自身の中に相手を見つけること

太刀川さんにお話いただいたヒントの一部を紹介します。

 

プロのクオリティを持つには、まず上質を知ること

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まず、太刀川さんはデザインの仕事をするうえで、「プロのクオリティ」を知ることが大事であると指摘しました。

 

  • 事例「プロのクオリティを持て」

たとえば、同じ具材を使った八重山そばでさえ、私たちは『美味しい店』『そうでない店』が判断でき、ものすごい微差を比較できている。デザインの仕事でも、良いクリエイティブをたくさん見続け、自分が知る一番良いものよりさらに良いものを作ることができれば、仕事はちゃんと向こうからやってくるんです」(太刀川さん)

太刀川さんがデザインの仕事をはじめたとき、最初のクライアントになったのはある地域の木工組合だったとのこと。その経験をもとに、はじめて受ける仕事であっても「やったことがあるかどうかは気にするな」と話します。

 

  • 事例「やったことはがあるかどうかは気にするな」

ある地域の木工コンペで最下位になったが、授賞式で木工組合の会長から同産業の喫緊の問題を聞く。帰ってからも解決策を考え一方的に送っていたところ「アンタみたいに親身になってくれた人は初めて」と言われ、最初のクライアントとなった。また、どんな案件でもクライアントや仕事に対して真摯に向き合うことで「経験の壁」を超えられることについて、太刀川さんは続けます。

 

  • 無茶な依頼からその後の仕事につながった事例

納期4日前に「誰かできる人はいないか?」と無茶な依頼が舞い込んできた際、期日以内にどうにか納品させる。その無茶なお願いを受け止めてあげたことから後日先方に会ってみたいと言われ、次の仕事につながった。

「仕事を投げる人は、それが無茶なお願いだということをわかって投げている。それをちゃんと受け止めてあげればすごく感謝され、経験を超えられるんです」(太刀川さん)。

 

  • 理想から逆算することで、勝負そのものを超越する

「やったことはがあるかどうかは気にするな」と言っても、はじめて勝負する領域でいきなり「勝つ」というのは難しいもの。「経験を超えられる」ヒントについて、さらに太刀川さんは続けます。

 

  • 「理想から逆算せよ」照明器具デザインの事例

ある照明器具のデザインを請け負ったとき、照明器具についての知識がなかった太刀川さんは、まずそのものについての「理想」を追求。「人類が生まれる前から夜を明るく照らしていた月に勝る照明なんてこの世にあるはずがない」と、月の三次元データをそのまま照明とし、好評を博す。

 

  • 「理想から逆算せよ」家具デザインの事例

間伐材の丸太、角材、板材をそのままの形で使うことをルールにした「そのままの家具」のブランドを作る。素材の加工を極力減らすことで、エコで理想的なブランドに。

「理想を叶えるためにはどういうやり方があるのか?を考えながら進めると、本当に勝てるときがある。ずるいまでに磨かれた理想的な切り口を持つことで、一気に経験は超えられる。月なんて僕のデザインじゃないとか、そういうレベルのものじゃないんです」と太刀川さん。物事の背景や勝負そのものまでもデザインしてしまう豊かな発想に、参加者一同も驚きます。

 

  • 順当に勝つには、周りを学ばないといけない

続けて太刀川さんは「順当に勝つには、周りを学ばないといけない」と言い、こんなボール球をヒットに導いた例を話してくれました。

 

  • 「周囲は全て学べ」パッケージデザインの事例

ある地方からうどんのパッケージデザインの依頼を受注。「製麺未経験」「高額な原価」「健康に良いか美味しいか否かは不明」というバックグラウンドのなか、まずは提示された値段以上の高額うどんの市場調査を行い、ある一定の共通したルールを知る。それらのルールを踏まえたデザインを編み出したところ人気商品となり、ペントアワード(世界のパッケージアワード)でも世界一を受賞。

「地域資源がないところでも勝てる可能性がある。石垣島からクリエイティブの勝負をすることは可能で、資源がたくさんある皆さんはむしろ有利なんです」と太刀川さん。

大事なのは徹底した市場調査によりルールを学び、できたものを世界に問うてみること。世界へ送り出すためには、作るだけで完結してはいけないということを教えてくれます。さらに太刀川さんは、依頼されたデザインを理想の形に仕上げるまでの手法について話します。

 

  • 「似た状況を探せ」化粧品のブランディング事例

日本の自然美をテーマにした化粧品のブランディングを依頼されたとき。「化粧という行動に近い日本美を表すもの」「日本の女性が美しいとき」という、2つの追求からはじめ、化粧に近い日本伝統の所作として「茶道」に辿り着く。さらに「日本の女性が美しいとき」を考えたときに「神社の白無垢の結婚式」をイメージ。そこで、プロダクトは白いガラスに赤布の帯をまき、白無垢を感じさせるデザインに。2014年のペントアワードで金賞を受賞する。

「皆さんがデザインするときに、その形においてどういう状況が理想なのかを一生懸命想像すると、近い状況があったりするんです。それが踏まえられているとブランドの筋が通り、その後にウェブサイトやショップをデザインすることになってもすごくやりやすい。その筋を探すのが、ある種デザインディレクターの仕事かもしれません」(太刀川さん)。

社会や未来に良い変化をもたらすためのデザイン「ソーシャルイノベーションデザイン」を理念に、さまざまなデザイン戦略を打ち立てる太刀川さんは、最後に、日本のイノベーション力が世界の課題解決に役立てることに言及します。

 

  • 「 自分自身の中に相手を見つけること」クールジャパン戦略の事例

政策ビジョンを再考し「世界の課題をクリエイティブに解決する日本」を設定。「日本ってクールだろう?」というのは大してクールではなく、本当の意味でクールジャパンというのはどういうことか?相手が勝手にクールと言ってくれるのはどういう状況なのか?を考えたとき、世界に「日本ありがとう!」と言ってもらえる状況を作ることであるとたどり着く。

「日本が世界の課題をクールに解決できればクールに決まっています。そういう課題先進国なりのクールさがあると思います」(太刀川さん)。

 

豊富な経験を糧にクリエイティブワークに向かうマインドを、次々と追求する太刀川さんのお話は、デザインやクリエイティブを生業とする人にとって、すぐに役立てることができる具体的な事例ばかりでした。

 

台湾人バイヤー・謝品華さんによるプレゼン

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太刀川さんの講義後、この日たまたま石垣島を訪れ、講義を聴講していた台湾人のバイヤー・謝品華さんにプレゼンをいただきました。謝さんは台湾出身で中国・台湾を拠点に、日本・中国・台湾の多数のプロダクトを取り扱うバイヤー。会社概要、経営理念、取り扱いブランドのほか、中華圏でのプロモーション戦略など、グローバルなクリエイティブビジネスの一端についてお話しいただきました。

 

クリエイティブビジネスで文化の橋渡し

「モノを売るだけの商社におさまらず、文化の橋渡しになれるような会社を目指している」という謝さん。中国に向けて日本のプロダクトや台湾のデザイナーを紹介し、台湾では日本のプロダクトを販売するだけでなく中国のデザインを持ち込むなど、各国のニーズを把握しながらビジネスを展開していると言います。

 

「皆さんのなかには、中国へのビジネス展開には二の足を踏む人も多いと思いますが、それは台湾人の私たちにとっても同じ」と話し、巨大なマーケットである中国で試みているプロモーション活動について、重要なポイントを紹介してくれました。

 

<中国でビジネスを展開するポイント>

▼リアル店舗

最初から大きな売り上げを目指すのではなく、まずはいい顧客をつかむため、彼らとつながるショップを持つこと

 

▼展示会への出展

顧客とつながる第2の方法として、展示会などへ出展すること。こうしたブランドPRによって、ブランドの価値を高める

 

▼メディア戦略

メディアと良い関係を保つこと。コラムを寄稿したり情報を提供することによって、大きな媒体が読者や視聴者に対して定期的に情報発信をしてくれるようになる

 

▼デザイナーとの関係

(バイヤーとして)製品を取り扱うにあたっては、デザイナーとの関係はとても大事。まずはその地域のデザイナーと良い関係を築き、よく知ることが大事

 

山形で知りあったデザイナーを台湾に招聘

謝さんは、自身の活動実績として香港で開いた日本の出版社との教育ワークショップ、台湾で行った日本酒と酒器を紹介するイベント、高雄の大学で行った日本ブランドを紹介するイベントなどについて紹介しました。

 

  • 山形で知り合ったデザイナーを台湾に招聘した事例

山形のワークショップで招かれてセミナーを行ったが、そのとき知り合ったデザイナーに「いつか必ず台湾に呼ぶ機会を作る」と約束。翌年、約束通り招聘することができ、台東で展覧会を開いた。その際、若手デザイナーの金銭的負担を理解していたので、プロダクトをすべて買い上げた。

「プロダクトを買い上げたのは、彼らが売り上げやマーケティングについて心配することで、デザインやクオリティが落ちてしまうことを知っていたし、観覧者がより彼らの作品を楽しめる環境を作りたかったから。これが私の考えでした」(謝さん)。

 

  • 無名のデザイナーを有名にした事例

フランクフルト・メッセの会社を招き、作品ではなくデザイナーにフォーカスを当てた展示会を上海で開催。2人の台湾人無名デザイナーを招き、著名デザイナーの間に展示するという展示法で彼らを有名にする。

「有名デザイナーの間に展示すると、誰もがそこに注目することになる。若いデザイナーや無名ブランドをPRするときに簡単にできる手法です。皆さんの中にも、きっとたくさんの手法があるはずです。それを心に留めておくのも良いかもしれません」(謝さん)。

 

  • 東京の無名デザイナーを台湾のデザイン誌でレポート

台湾のデザイン雑誌のコラムで、東京の無名デザイナーを特別レポート。ポテンシャルを秘めたデザイナーだったため、良い機会だと考え紹介した。

「中華圏でクリエイティブを発信する上で、ブランドのイメージを早い時期にインターネットなどを駆使して発信しておくのはとても重要なこと。なぜなら、コピーがもれてしまったらそれが最初だと思われてしまうから。中華圏では何より、まず公開することが重要なのです」(謝さん)。

続けて「作品に対して金儲けのためのモノと見るのではなく、まずはよい顧客とつながり、デザイナーとよい関係を築くことが重要」と話す謝さん。クリエイティブと対峙するときに、その作り手との真の交流が重要だと言う点で、デザインと人の関係性を説く太刀川さんと重なるものを感じました。

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太刀川さん、謝さんによるプレゼンを参加者らは熱心に聴講。日本を拠点に海外戦略も打ち立てる太刀川さんと、海外を拠点に日本のクリエイティブを外に発信する謝さんという、それぞれのクリエイティブへの視点が垣間見られるとても興味深い会になりました。第5回目は『Discover Japan』編集長の高橋俊宏さんをお迎えして「日本各地のクリエイティブ」を学びます。

 

(文・前花麻子/写真・中西康治)