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【石垣島Creative Laboレポート 】vol.3「デザインからはじまるまちと社会」byまちづクリエイティブ

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第3回目のクリエイティブラボ(12/9)は、「まちづクリエイティブ」(千葉県松戸市)創業者で代表取締役の寺井元一さんと同取締役でクリエイティブディレクターの小田雄太さんを招き、クリエイティブを利用してまちづくりを行う「MAD Cityプロジェクト」の取り組みについてお話しいただきました。

 

MAD Cityとは

松戸駅前・旧宿場町付近に位置付けられた半径500メートルのエリア。 48万人が住むベッドタウンとして知られている松戸市は、高齢化により空き店舗も増加。まちブランドを高める地域ディベロッパーとして生まれた「まちづクリエイティブ」は、ここでクリエイターらの戦略的誘致を起点としたまちづくり活動を行い、魅力ある独特のエリアとしてエリア価値の向上を図る。2010年のプロジェクト開始以来、延べ170人以上のクリエイティブ層を誘致。再開発手法によらない「人」によるまちづくりが行われている。

 

都心ではお互いの主張を通そうと互いに傷つけ合い、さまざまなことが禁止され、以前はできたことができなくなっている。そんな息苦しさを感じ、「町のルールも変えたい。そのためには、町を作り変えよう!」と考え、都心からほど近く、新しいまちづくりへの可能性を秘めた、良くも悪くも中途半場な都市だった松戸市に目をつけたと寺井さんは言います。

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まちの隙間を見つけ、創造の好循環を生み出すコミュニティ作り

 

新しいまちづくりを目指した寺井さんが着目したのは「廃墟」。そこを借り上げ、格安でクリエイターを呼び込み、DIYによるリノベーションを行い、それに付随する産業を呼び込む。そして、まちの人がクリエイティブを通して物理的につながるコミュニティづくりをしようというものでした。

「いかにしてクリエイティブの力でまちづくりをするか?」————そのモデルケースとして取り組むMAD City。クリエイターが集まりたくなるまちに変えていくため、具体的には下記運営を行っています。

<MAD Cityの取り組み>

* クリエイターへの物件斡旋(不動産賃貸)

* 住民の日常生活をサポート(各種紹介)

* 施設運営

* イベント/コワーキングスペース運営

* ビジネスサポート(仕事の斡旋も)

* 地域住民と移住者の橋渡し(地域コミュニティの紹介)

etc…

 

「アソシエーションデザインというもの。コミュニティの誰かにやらせるんじゃなく、やりたくなった人を応援することで自然といろんなことが起きてくるまちっていうのを目指している」と寺井さん。つまりこのまちでは、自律性と自発性を育みクリエイティブな発想を交流させることで、創造性あふれる独自のコミュニティを生み出しているのです。

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目に見えないデザインも町の要素

 

MAD Cityという名前を決めた後にまずやらなければならなかったのは、ロゴをデザインすることでした。「町や社会っていう抽象的で大きなものに対して、どうデザインするかが大きなチャレンジだった」と語るのはロゴなどMAD Cityのデザインを担当した小田さん。さまざまな企業やプロジェクトのアートディレクションを担当し、美術大学の講師も務める小田さんは、デザインには3つの分類があると説明します。

 

<デザインの3分類>

① システムデザイン・・・IT、交通などの「インフラ・システム」を利用したデザイン

ex.道路、OS、アプリ、ゲームなど

② サービスデザイン・・・無形のコミュニケーションデザイン

ex.音楽、パフォーマンス、映画、社会事業など

③ プロダクトデザイン・・・有形のコミュニケーションデザイン

ex.製品、服、食べ物、農業、イラストなど

 

最初は③のプロダクトデザインとして作ったMAD Cityのロゴ。次第にそのロゴが一人歩きを始め、住民たちから自発的にこのロゴを模したハンコや提灯などが作られ、一つの旗印・インフラのようになってきている……。これはロゴをつくった後に①②の要素も加わってきた結果と言えます。こうした現象からも分かるように、形を変えなくても視点(受け手・受け止め方)を変えることで、本質自体が変わることもあり得ると小田さんは指摘します。

「目に見えるデザインだけが『デザイン』として捉えがちだが、目に見えないものも存在する。この3つのデザインが複雑に関係しあって町や社会や色んなものを形作っていく」(小田さん)。

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「かっこいい」だけがデザインに必要な条件ではない

 

無形のデザインに対する小田さんの説に関連し、現ロゴデザインにGOサインを出した経緯について、寺井さんからはこんな話もありました。「今まで思ってもみなかったところに価値があったり、裏側で何が起きてるかってことを考えることが重要。ロゴデザインにおいても、『かっこいい』ってのは表層的なことであって、僕がデザインだと思っていなかったことをクリエイター側がどれだけちゃんと考えきれるかというのが重要で、そのロゴが10年、20年と残っていくなかで、ある種の味が出てくると思います」 。

 

クリエイティブなまちづくりを実際に進めているお二方から、その経緯や運営、デザインに対する哲学的な話も聞けたところで、後半は質疑応答やディスカッションが行われました。

 

MAD Cityへの質疑応答>

Q:収入源は不動産?

A:不動産とDIYリノベーションが収入のほとんど。社会起業家だったので、最初の2,3年は研修などの仕事もしていた。

 

Q:個々のクリエイターはどこから仕事もらってる?

A:ベースとしては東京に仕事を持っている人が多い。東京のクライアントと仕事して、その中で仕事を回し合ったりもしている。独自にプロジェクトを立ち上げたり、ワークショップをやる人も。

 

Q:ワークショップの参加者はどこから?

A:ものによる。エッジ感があるものは大半が東京など外から。身体を動かす内容などは毎週やっていて地元の方も多く、ちょっとずつ常連が増えていく感じ。

 

Q.どんなクリエイティブ層を?

A.まちのためにやってるので、貸す住人もシビアに選んだ。アートは頭数じゃなくてクオリティ。その人自体の実績や収入はあまりなくても考えていることが面白いからとか、そういうのを重要視している。最初期はアーティストが多かった。

 

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最後に司会よりこの日の日中、講師やメディア関係者とともに島のクリエイターの工房を訪れたプレスツアーの様子が共有され、「石垣島ではどういうことができるか」について皆でディスカッションしました。

 

ディスカッション>

司会:石垣はすごく恵まれた環境だが、お互いがあまり交流されていないのがもったいない。それぞれが持ってるポテンシャルを組み合わせることによって、もしかしたら一つの発注からフェスや映画になったり全く違うものが出来上がるのではと感じた。

参加者A(商工会職員):石垣の海や山など全部含めて動画にしてYoutubeにあげてみるのは?クリエイター紹介もできるし、石垣でこういうことができるってPRにもなるのでは。

 

参加者B(映像制作):お話の中で「リスクを取って…」というのが面白いと思った。行政になると「平等に」ということで動きがゆっくりになるため民間だから出来るのかなとは思うが、(石垣島クリエイティブフラッグのように)行政主体だから出来ること、逆にやりにくいことってある?

 

寺井さん:行政を待っていては何もできないので、勝手にクリエイター主導で進めて、あとで行政も興味をもつように、その流れ自体をデザインするのがいいのでは。

 

小田さん:役所に限らずそういう話はある。デザインの発注を受けたとき、「(デザイン案を)見なきゃ分かんない」って言うクライアントをどれだけデザイン見せずに納得させるか。僕の場合はすごく長いメールを送って納得してもらったりもするけど、言われてついつい作らないってことも自分の単価を上げていくのでは。

 

参加者C(編集者):クリエイターが集まりコラボレーションしたいと思った時に必要な機能とかある?例えば祭りだったり、MAD Cityの中でクリエイターさんたちが交流するような環境ってある?

 

寺井さん:石垣と違って車社会じゃないので道で会うことも多くて、じゃあ飲みに行こうってなったり。お祭りはもちろん重要。ただ、万能ではない。堅苦しさを感じる人もいる。

 

小田さん:どういうイベントを主催したらどういうお客さんがくるか…みたいなのを考えたりもする。みんな警戒心を解いて来るので、そこで縁が生まれる。

 

河尻さん(第2回目ゲストスピーカー):石垣の場合こもり過ぎていてお互いを知らな過ぎているので、まずはお互いを見に行って何をやってるか実際知るのが大事。僕らも昨日まで実は聞いても実態がよく分からなかったが、今日工房巡りをして初めて分かった。これはヤバい(=凄い)と。

 

司会:僕らにとってもいいワークショップだったと今日発見させてもらった。マーケティングとしては世界へがいいのでは。

 

河尻さん:プロダクトはすでにあるので、その後の仕組みですよね。うまくお金と流通の回路ができればかなりパワフルなことになりそう。

 

寺井さん:石垣のクリエイターはかなりクオリティが高い。世界を目標にするのは個人的にいいと思う。逆に東京だったら行かないけど、石垣なら…って来てくれそうな気がする。

 

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今回のラボは、島外からのゲストスピーカーやプレスによる工房めぐりが行われた後だったこともあり、ゲストらの熱気と期待も感じられるという興味深い構図も。「クリエイティブを利用したまちづくり」から「クリエイティブを利用したまちの発信」などと話も膨らみ、そのフィールドも世界へと飛躍しました。

 

次回は来年1月27日。内閣官房主催「クールジャパンムーブメント推進会議」のコンセプトディレクターを務めた太刀川英輔さんに、世界に向けたクリエイティブ戦略についてお話いただく予定です。今回の話を踏まえ、次回はアイデアを形にして外に発信する作業に向けて、さらに議論を深めていきたいと思います。

 

(文・前花麻子/写真・中西康治)