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【石垣島Creative Laboレポート 】vol.2「地域で活かせる先端広告のクリエイティブ」by河尻亨一

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石垣島Creative Labo vol.2

 ———— 先端広告のアイデアから島に活かせるヒントを探す

 

石垣島も肌寒くなった12月8日、第2回目のクリエイティブラボが開かれました。迎えたゲストスピーカーは元「広告批評」編集長で銀河ライター主宰の河尻亨一さん。

 

今回も個性豊かなプロフィールを持つ参加者が集まった会場で、参加者の自己紹介を聞いた河尻さんは「むしろ皆さんの話をして頂いた方がいいんじゃないかと思うぐらいの色んなキャリアを積んでらっしゃる方が多い」と一言。河尻さんの提案で前半はレクチャーというよりは「こういう話題をしてみませんか」というネタふりとなるプレゼンを行い、後半はおしゃべりをしながら前半の問いに答えるディスカッション形式の講義を進めることとなりました。

 

そして、単刀直入に切り出します

  ————「皆さん、景気はいいですか?」

 

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誰もがクリエイターになれる時代は逆にチャンス

 

参加者らが苦笑いを浮かべる中、こう続けます。「クリエイターと呼ばれる人の仕事のスタイルに今、新しいやり方みたいなものが生まれていると思うんです。デジタル化の波が押し寄せ、表現のハードルが一見下がっている。誰でも編集者・コピーライター・映像ディレクターなどになれる今の時代に、プロフェッショナルのクリエイターとして差別化というか、自分の良さを見せていくことが難しくなっているかもしれません」(河尻さん)。

 

誰もがクリエイターになれる時代になってきたことで、クリエイティブの差別化の難しさがでてきたと語る河尻さん。「その状況をチャンスとして考え、地域活性にも結びつけていけたら」と続けます。

 

世界一の広告の祭典をヒントに

 

広告の表現を専門に研究している河尻さんは、石垣島でも活用できる「新しい仕事のスタイルのヒント」として世界最大の広告フェス「CANNES LIONS(カンヌ国際映画祭)2014」の受賞作を紹介。その上で、現代先端広告には、以下の3つの要素が重要と説きます。

 

①関与(繋がること)

②シェア(人に言えること)

③体験(参加できること)

 

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広告作品と河尻さんの説明に見入る参加者。「本気でやった時に伝わるものになる場合が多い。繋がり方の美しさやかっこよさ、すごく感動するとか優しい気持ちになるとか、何らかのアイデアが人間の感情を揺さぶり、我々はシェアしてしまう。ただ、オンラインだけでは感情的になれないので、リアルな「場」も大切。あたかも自分が参加しているような気持ちになることをどうデザインするかが、重要な要素だと思っています」(河尻さん)。

 

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さらに、先端広告のアイデアを島のクリエイティブ活動に展開し、「みなさんの持つそれぞれのスキルと企画プロデュースみたいなものをどう組み合わせていくか。さらにいうと、デジタル系のスキルをどうのせていくかが大事」と語ります。後半のディスカッションでは、河尻さんからの「創作活動において悩んでいることは?」の問い掛けに、冒頭の内容にも繋がるこんな意見が出てきました。

 

「作業量と対価が見合わない」

————この意見を皮切りに、議論が広がります。

 

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「ひきこもりの島ってどうでしょう?」

 

河尻さん:周りの人は作業の苦労を知らないわけですよね。でもみんな苦しんでる姿は見たくないので、どっかでエンタメ化・コンテンツ化する必要があると思うんです。石垣島っていうだけでブランドだと思うので、この資産をどう使っていくか。

 

参加者A(デザイナー):石垣島はとてもユニークな場所。でも観光客は1回来ても、リピーターとして帰って来るかどうかわからない。そのためにはどういう磁力(=魅力)があればいいかを考えるのが、大きな問題と思います。

 

河尻さん:石垣島自体がひきこもっているということですよね。

 

参加者A:それはあると思いますね。ためらっているのか、出したことないから戸惑ってるのか。

 

河尻さん:逆手にとって「ひきこもりの島」的なのはどうでしょう?ひきこもりたい人は石垣島に大集合!みたいなこともあるかもしれません。

 

参加者A:そういう感じはあると思います。都会にいると「自分の世界を持ってたい」と言いにくいけど、ここへ来ると自分の世界を持っていいんだと思えます。

 

作業対価の問題から、まずは島のリーディング産業である観光業でも有用な「石垣島の魅力」探しが始まります。

 

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石垣島特有の「こもり」を考える

 

司会:「こもる」ってそもそも悪い言葉ではないですよね。スノーボード好きなら雪山にこもったりするけど、そこには自分なりの目標があって、ポジティブなエネルギーが込められている。たとえ目標にたどり着けなかったとしてもこもった期間はすごく大事で、切磋琢磨した仲間が将来助け合ったり……、というのが雪山ではありますよね。

 

参加者A:石垣で「こもり」を繋げていくと、もしかしたら日本全体にフィードバックできるような新しいこもり方や繋がり方ができるのかもしれませんね。コミュニティは小さいけど完全に隔離されているわけじゃないし、アジアにも近い。アーティストやクリエイターはおたくの時代があったが、そのパッションを外へ出して繋げるユニークな方法は、石垣でしかできないような気がする。

 

河尻さん:吉本隆明さんの著書に「ひきこもれ」というタイトルのものがありますが、表現者は自分の時間を持たなければいけないって言うんです。

 

参加者B(映像ディレクター):今「Do it yourself」 から「Do it with others」の流れがきていて、全然関係ない人と作業することでアイデアがぽんと出てきたりするので、一人でこもって作るんじゃなくて、みんなで一緒にできる場所が作りたいなと思っていて……それに近いなと思う。

 

河尻さん:「こもり」を繋げていく石垣版って何でしょう?石垣でしかできない何かがあるのでは?

 

参加者C(歌人):石垣に来てもひきこもってプログラム作業をしている友達がいるんですが、石垣にしかないものを楽しむのではなくて、東京と同じことをしているんです。石垣に来ているのにわざわざ東京と同じことをするのが、人によってはすごく贅沢なことなのだと。環境を変えてもあえてその環境を楽しまずにこもる楽しさがあると聞いて、なるほどなと思いました。

 

一同:笑

 

必ずしもネガティブなものではない「ひきこもり」。その石垣島らしさとは何か……?作業環境が生産効率に影響を与えるプログラマーの中には、思う存分「ひきこもる」ことができる石垣島で理想的な仕事環境を獲得し、それを楽しんでいる人がいるということも皆の興味をひきました。

 

続いて、「この島には美術館などがなく、発表する場所がない」

  ————こんな意見から、作品を発表する場=繋がる場へと議論が発展します。

 

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クリエイターと社会を繋げる場所づくり

 

河尻さん:世界初の地元クリエイターミュージアムを作るというのもありますね。みんなが作業してる状態で展示されてる。そしたら話題にはなりますよね(笑)。

 

一同:笑

 

参加者D(イラストレーター):イギリスでパディントンベアみたいなのがあるんですけど、色んな人がそれにデコレーションして街の中に置いて「パティントンを探せ」って(スタンプラリー的に)コンプリートするわけ。それを石垣島クリエイティブフラッグでもクリエイターさんたちのアトリエや事務所の前でやったら面白いのかもしれない。

 

河尻さん:なるほど。クリエイター同士がやるんじゃなく、スタンプラリーする人がメッセンジャーになるんですよね。それだったらルートを辿っていくと何か物ができたら楽しいですよね。クリエイティブラリー的な。個々のクリエイターはいるけれど、ちゃんと媒介していっている感じがありますし。

 

司会:東京にはイベントがあり過ぎるけど、石垣の規模感はすごくやりやすい。「Buzz(バズ)る」という状況を繋げることもできるかもしれませんね。

 

ひきこもることができるのは作業環境には最適だけど、ひきこもっていては個々のクリエイターの作業や作品が受け手に届かないという問題が出てきます。いかにしてクリエイター(作品)と受け手(客)を繋げるか……それが、今の石垣島のクリエイティブ活動には必要なのです。そして、その問題については逆にこの島の規模なら可能ではとの期待感も。ディスカッションも終盤を迎え、河尻さんがここまでの内容で実現可能なアイデアをホワイトボードにまとめます。

 

河尻さん:考えたんですけど、石垣島には色んなクリエイターがいるので、たとえばインターネット上のシステムでその繋がりが可視化できて、東京にいる人が「こんなものを作ってほしい」というニーズを書き込み、それを作れる「旅」がセットになっている。そしてクリエイターさんを訪ねて形にして、東京に戻るみたいにすると、リアルの場とオンラインの場がマッチして、流行ればお金が儲かる。ユーザーからの発注が直にくることになるし、バズる状態になるかもしれませんね。

 

参加者A:できればアジアや全世界から。それだけの地理的または豊かさなりの余裕をこの島は持ってるので。島全体がクリエイティブランドのようになったらいいな。

 

オンラインを通して島のクリエイターとクライアントの旅人が繋がり、クライアントが実際に足を運んで島を体感しながら、リアルの場でもクリエイターと繋がる。そこでさらにオンラインとリアルの場を行き来しながら仲間を増やし、モノが形になるクリエイティブな旅。その新しい発想がうまくBuzzれば評判を呼び、シェアされ、ビジネスとして成り立つ仕組み。河尻さんが説く現代先端広告に必要な3つの要素「繋がる」「シェア」「体験」がICFの活動アイデアにも出揃いました。

 

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島の「宝」を見つけ、独自の世界観を発信する

 

河尻さん:ある過疎の村で、紅葉の時期におばあちゃんが拾ってくる落ち葉が高級料亭に売れてすごく儲かったという話がありますが、こういう話が世の中にはけっこうあるんです。自分たちが「ゴミ」だと思っていたものが「宝」だったっていうのが絶対あると思うので、独自の世界観を出せたら良いと思います。こういう会をずっとやってると絶対何か形になると思うし、世界に出した方がいいんじゃないかと思う。

 

司会:まずははじめの一歩をどうするか。それをやり得るメンバーが集まってるし、この島には資源も要素もある。全4回を通して形になるものに残せたらいいなと思います。

 

美しい自然や独自の文化を育む石垣島では、クリエイティブな発想が思わぬビジネスの呼び水になることも。多種多様なクリエイターが揃う石垣島だからこそできることも多いのかもしれない、と今後の展開に期待がかかります。

 

さて、次回はアートとまちづくりの融合を目指す「まちづクリエイティブ」のお二方を迎え、立ち上げから現在の活動内容などをお話しいただきます。

 

(文・前花麻子/写真・中西康治)