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【石垣島Creative Labo 2016レポート】vol.5 「コンテンツマーケティング発想で<使われる>ための広告を」 谷口マサトさん

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「石垣島Creative Labo 2016」、第5回目のゲストスピーカーはLINE株式会社の谷口マサトさんにお越しいただきました。チーフプロデューサーとして各種広告企画をご担当。一昨年に上梓した『広告なのにシェアされるコンテンツマーケティング入門』(宣伝会議)が話題となりました。コンテンツマーケティングを展開するにあたっての秘訣や、大切にしていることをお話しいただきました。

 

コンテンツマーケティングとは?

 

ネットユーザーは、ウェブサイトに表示される広告を邪魔なものと考えてなかなか見てはくれません。そのなかで、従来の広告よりもコンテンツとしての比重を増すことで、読ませる広告、楽しめる広告として展開することが<コンテンツマーケティング>です。いわば、インターネットの普及と成長とともに進化したマーケティングと言えます。

 

谷口さんはアメリカでの調査データを用いて、スマートフォンに代表されるモバイル端末は、人々が多くの時間を割いて利用しているにも関わらず、雑誌やテレビなどの旧来のメディアと比べて広告費用が割かれていない現状を指摘します。伸びしろの大きなこの領域において、クライアントの商品やサービスをLINEやライブドアニュースにおいて、コンテンツマーケティングの手法で展開するのが谷口さんのお仕事です。

 

偏りや不足があるコンテンツの強さ

 

谷口さんは、LINEが企業に提供する複数のデジタルキャンペーンを紹介。そして、企業とユーザがLINEで「友だち」になることでスタンプを利用することができる「LINEスタンプ」を例に、コンテンツマーケティングという面から考えた場合のポイントとなる点を次のように話します。

 

第一に、宣伝したい商品そのものがスタンプになれるようなものは、広告としての効果が即時に期待できるが、そうではない商品についてはキャラクターを設けるなどの入念な準備が必要であること。そして、スタンプはユーザの感情表現に使われるものなので、企業の視点で「これが言いたい!」というスタンプを用意するのではなく、ユーザのコミュニケーションにどのように使われるかを考慮してスタンプに反映させることが第二のポイント、とのこと。「無料なのだからユーザに広く使われる」というようなものではなく、しっかりとした戦略をもって展開する必要があることが分かります。

 

谷口さんは、ネットでは一般的にバランスのとれたコンテンツよりも、偏りや不足があるコンテンツのほうが広がりやすい、とします。映画において全てを語らずに余韻を残すことが大切とされているようなことが、ネットにおいてはさらに重要度が高く、例えばある一面を切り取って強調したコンテンツは、それに同調する意見と同調しない意見の両方を生むことで、ユーザ間において自然に広がっていく傾向にある、ということです。

 

コンテンツマーケティングの成功のヒント

 

次に、LINEを通して気軽にプレゼントを送ることができるサービス「LINEギフト」の広告として谷口さんが展開した結果、150万人以上に読まれたスマートフォン向け漫画「プレゼント・ハラスメント」の事例が紹介されました(ライブドアニュース【マンガで解説】プレゼント・ハラスメントには気をつけろ!)。一般的に、商品の紹介に終始してしまいがちな広告漫画ですが、この作品は漫画として成立しており、面白いと評判になりました。

 

谷口さんは、「ネットは広告だけでは見てもらえない。一方、コンテンツだけでは儲からない」としたうえで、両者を掛け合わせたコンテンツマーケティングの意義を語ります。広告を発信する側としても、広告は嫌がられるという前提で考えていては、どうしても短い時間でなるべく大きな反応を得ようとしてしまいますが、「普通に考えても広告はできるだけ長く見てもらったほうがよく、そのほうが広いシェア(共有)につながる」という谷口さんのお話からも、ネットにおけるコンテンツマーケティングが広告のある種の理想形であることが見えてきます。

 

そのコンテンツマーケティングの成功のヒントとして、谷口さんは次の点をあげます。

 

    ・従来のテレビCMや広告の発想で、焦点を絞って内容を極力削ろうとしてしまいがち。誰しも経験があるように、ネットでは気になったことをどこまでも調べて知ろうとするもの。ネットのコンテンツは、ひとまずたくさん載せて、どれかにユーザが反応してもらえればいいという発想が大切。例えるならば、前者は銛(モリ)を使った漁であり、後者は網を使った漁と言える。

     

    ・ネットであっても動画は一般的に高コストになりがちなので、まずはネットで読める漫画をたくさん作って、そこで反応をみてから動画での展開を考える、というのは方法としてアリ。

     

    ・ネットでウケるのは基本的には「無駄な努力」。宴会芸のように、笑わせよう・振り向かせようということが全面に出ているコンテンツは見る側が、笑うまい、振り向かまいと身構えてしまう。「本人は真面目だけれど、一般的にはズレている」というのが王道。

     

    ・広告を作るというのはある種の<感情商売>。お笑いをベースとしたコンテンツは、一般的にユーザの警戒を解きやすく、また突っ込むことが野暮になるので炎上しづらい。もちろん、ユーザに笑ってもらうのが一番だが、例えばそこから<泣き>に持っていくと、そのギャップとしての感情量が増えて印象深いものになる。ただ、ユーザにとってさくっと楽しめるコンテンツであっても、そのディティールはかなり作り込んでいく努力が必要。

     

    ・コンテンツと広告ははっきり分けて提示することが大切。例えば、何らかのストーリー物を作るとして、その中の登場人物が安易に商品を薦めたりすると、ユーザに無視されるだけではなく、ときには「炎上」にも繋がる。

     

    <使われる>ための広告として考える

     

    従来のテレビCMのような<見せる>ものと、ネットにおける人々に<使われる>ための広告は大きく異なる、としたうえで、谷口さんはその変化は、かつて映画からテレビへと時代が移り変わってきたときを振り返ると参考になる、とします。映画館に出向いて座って見る作品としての映画と、お茶の間で気楽に見る娯楽としてのテレビ番組との、内容的な違いは大きいものです。時代やメディアに合わせた表現を追求する必要がある、というわけです。

     

    テレビ以上に身近な存在となったネットにおいては、情報発信者とユーザとの距離は極めて近く「友だちとの会話」感覚でアプローチしていく必要があります。映画や漫画などの各分野で培われたコンテンツ論は常に研究する必要はある、としながらも、いくらでもあるコンテンツ論から、いかに商品と組み合わせて展開していくかが工夫のしどころであり、面白いところだと、谷口さんは述べます。

     

    最後に、クライアントへの提案の仕方のポイントとして、作るコンテンツが「話題になるか」というユーザ向けの発想と、「商品に落とし込めているか」という広告主向けのふたつの視点での提案が必要であること、そして、商品の特徴をユーザにとって身近な「一般的な話」に置き換えたうえで、商品の宣伝に終止することなく「斜め上に全力を注ぐこと」でユーザとの間合いを詰めることが大切だとして、トークイベントを締め括りました。

     

    ディスカッション・質疑応答

     

    参加者A:商品がどれだけ売れたか、広告がどれくらいシェアされたのか、などの数字についてはどう考えていますか?

     

    谷口さん:単なる商品販売のためのコンバージョン率の高さを目指すなら、バナー広告などの従来の広告でいい。インターネットではまだまだ発展の余地がある、「ブランド広告」を目指している。ただ、コンテンツ広告さえ用意すればシェアされるというわけではなく、広告の露出による広くて長いリーチは必要だと考えている。シェアされるなかで、従来の広告では生み出せなかった広がりを生み出せるのが、ブランド広告の楽しいところだと感じている。

     

    参加者B:例えば石垣島をPRするとしたら、どうお考えれになりますか?

     

    谷口さん:大阪府の堺市のプロモーションを手伝ったことがあり、そこで生み出した「ハニワ課長」というキャラクターはいまでも活用していただいている。キャラクターを生み出すのは、PR単発で終わることなくその後も継続的な展開が期待されるから。また、「ハニワ課長」がゆるキャラブームのなかであえて可愛くなく、不気味ともいえる姿にしたことなど、話題になる仕掛け作りが必要。

     

    トークイベントを終えて

     

    映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の宣伝のために作られた「大阪の虎ガラのオバチャンと227分デートしてみた!」や、映画『謝罪の王様』のために作られた「究極の土下座を競う『下座リンピック』開催」など、実例紹介のたびに大きな笑い声が起こったトークイベントとなりました。

     

    会場からあがった「石垣島の美しさを伝えたいという思いは強いが、ネットとの親和性をしっかり考えてPRしたり、これまでとは違った島の見え方を考えたりするようなことはできていない」という声はまさに切実な課題。広告であるのに広告でないような、それでいて宣伝された商品への興味や親しみが自然と湧いてくる谷口さんの作品には、たくさんのヒントが含まれていたように思います。

     

    次回の「石垣島Creative Labo 2016」は、PARTYの伊藤直樹さんをゲストスピーカーにお迎えいたします。

     

    (開催:2016年5月23日(月) 於:ホテルエメラルドアイル石垣島 レポート:光森裕樹)