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【石垣島Creative Labo 2016レポート】vol.4 「共創が生みだすクリエイティブ」 椎谷ハレオさん

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「石垣島Creative Labo 2016」、第4回目のゲストスピーカーはチームラボ株式会社の椎谷ハレオさんにお越しいただきました。IT分野に留まらない、科学技術とアートを結びつけた様々な試みで知られる同社の事業を参考にしつつ、クリエイティブで石垣島を活性化するためのヒントを参加者との対話を通して模索していきます。

 

チームラボの精神にあふれるアトラクション

 

椎谷さんは最初に、昨年12月の時点で国内・海外での累計来場者数200万人を突破した「チームラボアイランド ―学ぶ!未来の遊園地―」で展開されているアートアトラクションを紹介。

 

< お絵かき水族館 / Sketch Aquarium >

 

紙に描いた魚の絵が、実際に大きな水族館の映像内で泳ぎ始めます。泳いでいる魚には、触れたり餌をあげたりすることができる楽しいアトラクションです。

 

例えば、まだ幼い3歳〜4歳の子どもがお魚の絵を描き、もう少し大きな子どもである小学生が、映像に登場した魚に触ったり追いかけたりするなど、年齢を越えた子どもたちが一緒に遊べることがひとつのポイントだと、椎谷さんは話します。さらに、誰と遊ぶかによって毎回異なる水族館になる点も大きなポイント。これにより、同じアトラクションでありつつ何度来ても楽しむことができます。チームラボが大切にしている、共同で創造する<共創>という考え方がはっきりと伝わってくるアトラクションです。

 

< お絵かきタウン / Sketch Town>

 

こちらも「お絵かき水族館」同様、紙に描いた車や建物の絵が映像内に登場するアトラクションです。「お絵かきタウン」では、平面性を基本としていた魚とは異なり、描いた車や建物が立体性を意識した映像として登場し、それぞれの役割に応じたアクションが展開されるのが特徴です。さらに、「お絵かきタウンペーパークラフト」として、平面に描いた車の絵などを、組み立てると立体物になる展開図として出力することもできます。

 

思いついたものが簡単に映像になるだけではなく、手に取っていろいろな角度で見たりすることができる点がポイント。例えば、「将来の石垣島をこうしたい」というアイデアを出し合う際に、単に話し合うだけではなく、すばやく簡単に手に取れるようにして検討できるとよりよいアイデアが生まれるのでは、と椎谷さんは提案します。

 

< 光のボールでオーケストラ / Light Ball Orchestra >

 

様々な大きさの光るボールを転がすと、色が変わったり音が変わったりするアトラクション。頭上にあるボールに触れると空間全体の色合いを大きく変えることもできます。多くの子どもたちが思い思いにボールに働きかけた結果が、ボールたちの光と音のオーケストラとしてひとつになります。

 

このアトラクションも、誰と一緒に遊ぶかで結果が異なるのがポイントと椎谷さんは話します。「子どもには既成概念がないけれど、大人はどうしても物事をぱっと見て決めつけがち」として、石垣島の将来について考えるときにも、大人自身が既成概念で考えることをやめる必要」があり、そして、中高生のような若い人と一緒に考えていくべきだとします。

 

<若者の○○離れ>を考える

 

「専門家が偉そうにこういうものを作りたいと決めるような、<ピラミッド型のも物作り>は終わると15年ほど前に思った」 チームラボにジョインした頃を振り返りつつ、椎谷さんはそう語ります。共同で創造する<共創>というあり方が主流になってくると考えられるこれからの時代において、「全てを疑う必要がある」と椎谷さん述べます。例えば、最近の若者は、昭和の時代に育った私たちにはお馴染みのテレビのリモコンのような決まったボタンを押す物よりも、スマートフォンのように決まったボタンはなく、それぞれの状況に応じて最適化されたボタンに囲まれて育っています。同じ時代を生きながら、世代が異なれば当たり前とされるインターフェースが異なるわけです。

 

長い将来を考えると「こうしたらこうなる」という前提がない若い世代の考え方が主流になって来ます。椎谷さんは「彼らの意見を積極的に取り入れないといけない」と参加者に強く念を押します。若者の、野球離れ・ビール離れ・車離れ…などの<いかにも昭和的なモノ>とは若者が無縁であることを、参加者と改めて確認。会場からは「最近の若者はFacebookなどやっておらず、写真撮影の依頼がInstagram経由で来たりする」という体験談もあがり、もうそんな時代なのか…という驚きの声も。

 

プロセスの楽しさが求められる時代に

 

<○○離れ>として語られる若者たちですが、椎谷さんはその背景を探りながら、彼らは「結果ではなく、プロセスを楽しんでいる」と話します。例えば極端に言えば、昭和の時代においては高級車に乗るのが目的であり、そのために汗水流して働くというのが当たり前だったと言えます。

 

しかし、現代の若者にとっては、めったに乗ることのない車はステータスにはなりえず、保険代や駐車場代ばかりがかさむコストそのもの。そこから、必要なときに車を借りればいいというレンタル文化が生まれ、さらに今では個人間で車の貸し借りをするサービスも登場してきています。高いお金を払わなくても、どこかの誰かが購入した珍しい高級車を場面に合わせて選ぶことができます。その一方で、高級車を貸す側は、自分の車が誰かの役に立っているという、ステータスとは異なる満足感を得ることができます。

 

ボタンもないiPhoneがなぜこれほどまでに広がったのか、CD離れとされる若者たちはなぜ積極的に野外フェスには行くのか、様々な世の中の流れを丁寧に見つめ直しつつ、椎谷さんは「プロセスが楽しいことが、今の人には重要」と結論付けます。そして、例えば石垣島に移住者や旅行者を含めてもっと多くのひとが来て欲しいのであれば、お金を掛けて何かをするのではなく、「プロセスが楽しい」ということを鍵に考えては、と提案します。

 

都市や地域を超えた共創を目指してみる

 

石垣島は地方都市としては珍しく人口が増えていることについて、椎谷さんは「よそ者(移住者)が多いことがいい影響を与えているのでは」と推察します。石垣島のいいところ・悪いところをよそ者は既成概念なく指摘してくれる。長く石垣島にいた人と彼らによって、どんどん石垣島がカスタマイズされていく。ある意味で「共創」と呼べるものがこの島を支えているのかもしれません。

 

一方で椎谷さんは、地域にまつわる統計数字を簡単に取得することができる、地域経済分析システム「RESAS」を見ながら、将来的には石垣島も人口減になるはずと指摘。そのなかで、石垣島単独で物事を考えるのではなく、たとえば隣の竹富島と一緒に継続的に育っていけるプランを考えるなど、都市や地域を超えた共創を考えていったほうが、国や県などの予算を獲得するにあたっても、ずっと建設的で魅力的なプランになるだろうと話します。

 

また、経験の長い人や年配の世代は、若い世代に対して単に自分の時代にしか通用しない知識を伝えるだけの「先生」になるのではなく、彼らの実現したいことに耳を傾けてその実現に足りたいものが得られるように導く「マネジャー」であることの必要を説きます。

 

トークイベントを終えて

 

会場との問答を通して、答えやそのヒントを探っていった今回のトークイベントは、まさに椎谷さんが大切にされている共創そのもの。「石垣島には専門学校や大学がないため、二十歳前後の若者人口が大きく減る」という会場からの課題提案については、現代においては学校や大学のかたちもいろいろあるので実際に作ってみればいい、と椎谷さんは提案。

 

「石垣島の若者はとにかく島から出たいので、島内に学校があっても意味はない」という声には、「たとえば、島根県海士町のような離島にある高校の先行事例を参考に、島の外からでも入りたくなる学校を考えてみては」と提案するなど、島の中だけの視点ではどうしても諦めがちで小さくまとまりがちなアイデアを、大きく膨らませていきます。

 

その柔軟な考え方と共創の精神が、これからの石垣島を考えるうえでの大切なものになっていくことが参加者皆に感じられた会となりました。

 

次回の「石垣島Creative Labo 2016」は、LINE株式会社の谷口マサトさんをゲストスピーカーにお迎えいたします。

 

(開催:2016年5月22日(日) 於:ホテルエメラルドアイル石垣島 レポート:光森裕樹)