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【石垣島Creative Labo 2016レポート】vol.7 クロージング「石垣島 Creative Flag のこれから」 鯨本あつこさん・河尻亨一さん

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2016年の石垣島Creative Laboも、ゲストスピーカーによる一連の講義は終了。これまでの内容を振り返りつつ、石垣島 Creative Flag のこれからについて、同組織の理事である鯨本あつこさん・河尻亨一さんにお話しいただきました。

 

ゲストスピーカーの選出意図と振り返り

 

ゲストスピーカーの方々の選出と登壇交渉を担当した河尻さんは、その選出意図について次のように語ります。

 

・Creative Laboの前半では、具体的なスキルセットとも言える分野が中心。嶋浩一郎さんにはPR方法とアイデアの生み出し方、中島信也さんにはコマーシャルと映像の方法論、十文字美信さんには写真芸術、と同じ分野で活動している参加者にとってすぐにでも活かせる内容を設定。

 

・Creative Laboの後半では、ネットやITに関連したデジタル分野が中心。椎谷ハレオさんにはデジタル分野における共創という考え方、谷口マサトさんはネット上で広くシェアされるコンテンツ作り、伊藤直樹さんには技術と表現をかけ合わせて世界で勝負する方法、と参加者の活動や表現を広く世に伝えるためのヒントにあふれた内容を設定。

 

様々なゲストスピーカーのお話にも出てきたカンヌライオンズの賞を、石垣島のクリエイティブで目指したいとの意気込みを語りました。

 

鯨本さんは、一連のトークイベントが東京でもなかなか準備できないような貴重なものであったことに、あらためて驚いてしまう、と述べたうえで、石垣島 Creative Flagを島外からも仕事が舞い込んでくるような組織にしていきたいと語ります。そのうえで、設立から3年が経った今、次の段階を島外のより多くの人にその存在を認識してもらうフェーズだとしたうえで、「南の島のデザインラボ」として幅広い活動を行っていきたいと語ります。

 

続いて、世界の優れたクリエイティブとそれが生む様々な課題の解決の宝庫として、2016年のカンヌライオンズにエントリーされた作品を河尻さんがミニトーク形式で紹介していきます。

 

「カンヌライオンズ」とは

 

フランスの都市カンヌと言えば日本では「映画祭」として知られていますが、その規模のうえでも世界的な認知のうえでも「カンヌライオンズ」は映画祭を凌ぐ存在です。「カンヌライオンズ」は、すぐれた広告やコミュニケーションに関する賞を与える言わばクリエイティブの祝祭の場。正式な名称を、「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)」と言います。

 

河尻さんは、昔は「カンヌ広告祭」と呼ばれていたが、「広く告げる」という広告の手段が通用した時代が過ぎるなかで、カンヌライオンズもその性格を変えてきた、と話します。欧米系のメディアがこぞってカンヌライオンズを取り上げているにも関わらず日本での認知が低いことは、日本のクリエイティブ産業にとってよいこととは言えないとしつつも、カンヌライオンズに参加する日本人メンバーで独自の勉強会を現地で開くなど、知っている人にとっては「かなり<熱い>場所」になっていると河尻さんは述べます。

 

そのカンヌライオンズもこの10年という期間で見ると「テクノロジー」を核として、表現の幅も取り組む課題の種類もさらなる広がりを見せているようです。

 

Cannes Lions 2016 〜クリエイターは人工知能に勝てるか?〜

 

河尻さんは、10年を通してのカンヌライオンズ取材の経験からも2016年は多くの学びがあったとして、その要点を7つに絞って紹介していきます。

 

< 1. 人工知能(AI)はココまで来てる >

 

Google関連会社のDeepMindによる、人工知能を用いて碁への挑戦は、日本でも広く報じられました(Google DeepMind: Ground-breaking AlphaGo masters the game of Go)。チェスや将棋と比べるとその手数が多い碁においては、人工知能においてもある種の「感性」とも呼べるものが必要となってくることも。河尻さんは、Googleは別に碁で勝つために人工知能を研究しているのではなく、人工知能で世の中に起こそうとしている革命が世の中にすんなりと受け入れられるように、言わばクッションの役割を果たすPR手段として碁に挑んでいると考えられる、と見ています。

 

また、レンブラントの絵画作品から、その絵の具の「盛り具合」の様子までをもデータ化して人工知能によってレンブラントの「新作」を生み出すプロジェクトも紹介(The Next Rembrandth)。技術の進化だけではなく、ING銀行の発案であったことにも注目したい、としました。

 

< 2. ヴァーチャル・リアリティ(VR)もココまで来た >

 

続いて紹介されたのは最近大きな注目を集めている「ヴァーチャル・リアリティ」。バス内の窓に火星の風景を映すことで、子どもたちにヘッドセットなどの特別な装置なしで火星旅行を楽しんでもらうロッキード社による取り組み(FIELD TRIP TO MARS)や、ニューヨーク・タイムズ紙による360度映像を用いた報道(NYT VR: Virtual Reality by The New York Times)、そして、ベテランアニメーターであるグレン・キーン氏がVR空間のなかで絵を描くプロジェクト(Glen Keane – Step into the Page)などを紹介しつつ、河尻さんはどの作品においても「技術の奴隷にならない広がり」があるとして、流行にのって安易に技術を取り入れるのではなく、その技術の登場が意味するところをしっかり解釈したうえで表現手段に使いたい、と話しました。

 

< 3. 物語るプロダクトたち >

 

VRが世界を仮想的に体験させる一方で、衣服に織り込んだセンサーでスマートフォンなどの端末をリモート操作する試み(PROJECT JACQUARD)や、ペットボトルだけで電気を使わずに室内の温度を下げるバングラディシュでの取り組み(This amazing Bangladeshi air cooler is made from plastic bottles and uses no electricity)など、現実の世界においてもハイテク、ローテクを問わず様々な技術やアイデアが新しい世界を見せたり、困難を解決したりしていることが分かります。河尻さんは、「クリエイティブそのものが素晴らしいとしても、そこにアイデアと解決すべきものがなければ意味がない」と強調します。

 

< 4. やっぱりリアル体験が好き。人間だもの >

 

一方で、先端技術や科学を用いるのではなく、いわばアナログとも言えるクリエイティブで人々にリアルな体験を感じさせる作品も多くあります。例えば、新作ゲームの過酷な世界観を伝えるために、野外のビルボードに実際に24時間経ち続けるサバイバルレースを実施して中継した企画(Case: ‘Survival Billboard’ in London)や、ゴッホ美術館の宣伝を兼ねて、実際にゴッホの絵画に描かれた部屋を現実に再現したうえでAirbnbにて宿泊施設として提供した取り組み(Van Gogh’s Bedroom)など、見る人の五感に直接訴えるようなアイデアとクリエイティブが魅力的です。

 

< 5. 大企業と国が動けば世界は変わるかも >

 

スウェーデンが公開しているある代表番号に電話をかけると、Swedish Tourist Associationに登録しているスウェーデン人に旅行相談ができる取り組み(The Swedish Number)や、バーガーキングが国連の提唱する「PEACE ONE DAY」に、ライバルであるマクドナルドとの停戦として両社の商品を組み合わせたハンバーガーのレシピを公開した広告(Axis Gold 2016 – Burger King: McWhopper)など、国や大企業が、気の利いた堅苦しくないクリエイティブを展開することで、「巨大組織がこんなことを!」と世界が大きく反応する例も、カンヌライオンズでは見られました。

 

掛かっているお金は大きなものですが、アイデアは極めてシンプル。そして、「実際にやったということが一番すごい」と河尻さんは述べます。

 

< 6. それでも世界は課題が山積み >

 

様々な作品が登場するということは、その背景に様々な課題があるということ。例えば、DV(ドメスティック・バイオレンス)が大きな問題となっているコスタリカでは、その発生がサッカーの試合中継の盛り上がりとも関連があるとして、中継放送のスコア表示の横に、「第2のスコアボード」として試合中に報告されたDVの件数を表示(THE SECOND SCOREBOARD)。

 

また、乳がんの早期発見を唱えるNPO「MACMA」は、多くのSNSで女性の乳房の映像が投稿できないことを逆手に取って、男性の胸を使って乳がんのセルフチェックの方法を公開して話題に(#ManBoobs4Boobs)。この試みは、乳がんをいかに早く発見するかという課題に取り組むだけではなく、女性と男性とで表現できることに差があることをどう考えるかを深く問うものにもなっています。

 

いずれの問題も、簡単に解決するものではありません。しかし、それでもどこまで解決できるか本気で取り組んでいる人がいることが伝わってくる、と河尻さんは評価します。

 

< 7. 「フィルム」は感動合戦に >

 

最後にドキュメンタリー的な映像分野を河尻さんは取り上げます。例として挙げられた、呼吸器系の疾患がある人々が合唱に挑戦するフィリップス社の取り組み(ブレスレス・クワイア)について、大きな企業が社会的な活動に真剣に取り組むことが世界的に当たり前になっていることは素晴らしいことであり、内容も非常に感動的としつつも、河尻さんは全体として「感動合戦」になりつつある傾向に懸念を示しました。

 

島がよくなるシンプルで強いアイデアを

 

最後に河尻さん、鯨本さんそれぞれがまとめの言葉を発表。

 

河尻さんは、どう表現するかという局面においては当然、表現の技術が要るとしつつ、「表現が先行しても仕方ない」と話します。カンヌライオンズにおいて日本の出展作品が賞を得ることもあるが、海外の人から、面白いけれどそれが何を解決するのか分からないと言われることは多いようです。解決したいものがあればクリエイティブは必ず活きてくるとして、「島がよくなるシンプルで強いアイデアは何なのか」を考えていきたいと話しました。

 

鯨本さんは、紹介されたカンヌライオンズの作品を振り返りつつ、クライアントと仕事を進めるうえでは当然、様々な要望があがるが、そこからひとつに絞る勇気が必要であり、また、世界に向けて発信するのであれば、たとえ言葉がなくとも伝わる表現をこころがけるのがポイントとなりそう、とまとめます。
来年度の、石垣島 Creative Flag の更なる広がりに参加者の期待が高まったところで、今年度の石垣島Creative Laboは無事お開きとなりました。

 

(開催:2016年8月27日(土) 於:ホテルエメラルドアイル石垣島 レポート:光森裕樹)

 

【石垣島Creative Labo 2016レポート】vol.6 「逃げてきた先、そして技術との関わり方」 伊藤直樹さん

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「石垣島Creative Labo 2016」、第6回目のゲストスピーカーはPARTY(株式会社パーティー)の伊藤直樹さんにお越しいただきました。PARTYは「クリエイティブ・ラボ」として、インターネット社会ならではのデジタル技術を活用したデザインを行っている会社。近作としては、成田空港第3ターミナルの陸上トラックを模したデザインや、サンスターのスマホと連動するスマートハブラシ「G・U・M PLAY」が有名ですが、国内にとどまることなく世界中で活躍する会社です。その設立までの経緯を中心に、世界と仕事をする・世界で仕事をするヒントをお話いただきました。

 

逃げてきたらこうなった

 

京都造形芸術大学の教授でもある伊藤さんは、高校生の50人に一人程度しか芸術大学を目指さず、またその8割5分が女性であるという大きな偏りのある現状を危惧。京都造形芸術大学のブランディングにも携わるなかで、クリエイティブを志す人を増やすには、大学としてできることだけではなく、小学校などの低年齢のころからクリエイティブに触れるような環境が必要だとします。

 

その伊藤さん自身は、4歳の頃から絵画を習っていましたが、芸術大学には進みませんでした。自身のこれまでを振り返って、伊藤さんは「逃げて、逃げて、逃げてきたらこうなった」と言います。

 

今いる場所を嫌うのは意味がない

 

小さな頃から絵を描くのが好きな伊藤さんは、一方で親に与えられた世界地図を眺めるのも好きで、国名や山脈・川の名前をひたすら暗記するような少年でした。そのなかで、「いつかは世界に行きたいなぁ」という夢を描くようになりますが、それは世界がすごくて日本はすごくない、というような思いからではなく、純粋な憧れでした。

 

受験を経て大学生になった伊藤さんは、社会生活や学生生活において一気にあふれだした情報の渦のなかで、どうしても篭りがちになります。そんななかで思い切ってインドの放浪の旅に出発。しかし、現地で赤痢にかかって生死の境をさまよったり、「絨毯を買うまで帰さない」と言われて強面の男たちに軟禁されたりと、さんざんな目に。それでも、伊藤さんは「自分が今いる場所を嫌うのは意味がない。選択したのは自分。ここでは<勝負>できないが、インドなんて二度と来ない、というようには思わないようにした」と述べます。当時読んだ浅田彰の『逃走論―スキゾ・キッズの冒険』に書かれていた「軽やかに逃走すればいい」という考え方は、伊藤さんの心に響き「すごく気持ちが軽くなった」と振り返ります。

 

国内で勝てないのなら、海外で勝てばいいのではないか

 

1995年、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件のあった激動の年に、伊藤さんは広告代理店であるアサツーディ・ケイに入社します。しかし、希望したクリエイティブの部署には行くことができませんでした。同世代である麻生哲朗さんが電通から独立してクリエイティブ・エージェンシー「TUGBOAT」を立ち上げたこと(1999年)や、彼の生み出すクリエイティブなCMを横目で見ながら、CMの分野ではとうてい勝てないと実感。しかし、徐々に一般化し始めたインターネットには学生時代から大きな可能性を感じていました。

 

2000年代になり、Googleの登場に代表されるようなITバブルの時代に。一般家庭でもネットの常時接続が普及し始めました。そのなかでNIKEの仕事を担当。携帯電話のバイブレーションを、サッカーのパスを受けた状況に見立て、複数間のメッセージのやりとりでサッカーを行う企画「蹴メ」は、中高生の間で大きな反響を生みました。伊藤さんは、ITが生むインタラクティブの可能性を実感します。

 

2005年には、念願のクリエイティブ局に異動に。しかし、入社してすでに10年が経っており、およそ200名が所属する部署のなかで、仕事はなかなか回ってきません。それでも、Macromedia社(現Adobe社)のFlashで複雑な動きのあるデザインがブラウザ上でできるようになったことや、YouTubeのような動画サイトが現れ始めたのを見て、「インターネットと映像を融合させて何かができるはず」と感じてきたことに、世の中の技術がようやく追いついたことに気づきます。

 

NIKEとの取り組みである「NikeCosplay」では、YouTubeにてゲリラ的に公開した動画が大きな話題に。当初は、当時日本で流行っていたSNS「mixi」で広がることを第一に考えていたものの、蓋を開けてみるとその映像は100カ国以上の人が観ていることに気付いた伊藤さんは、「クリエイティブにおいて、国内で勝てないのなら、海外で勝てばいいのではないか」ということを、意識し始めます。

 

それからの仕事はいっそう海外を意識した要素が強く、XBOX用ゲームソフト「ブルードラゴン」のキャンペーンでは、当時珍しかったプロジェクションマッピングを用いて、影を大きく形を変えたり動いたりするさまを楽しむ作品のように、言葉や文化的背景に依らず、誰もがぱっと理解できて魅力を感じ取れるものが増えてきました。

 

作品が海外で高く評価されるなかで、海外における賞の審査員を担当するようになり、アメリカのポートランドに本社を置くエージェンシー「Wieden+Kennedy(ワイデン・アンド・ケネディ)」に活躍の場を移します。

 

Wieden+Kennedyに学んだこと

 

伊藤さんはWieden+Kennedyで多くのことを学んだとして、そこからふたつを選んで紹介。

 

ひとつ目は、まずはマニフェストとして企業やブランドのメッセージを作ってから、作業に取り掛かるという方法。日本における広告表現やクリエイティブにおいては、どうしてもいきなりシナリオやデザインから入ってしまいがち。たとえ数十億円が動く案件であったとしても、まずはマニフェストを作成し、そこからブレないようにクリエイティブを作成していくことは大切であるとします。

 

ふたつ目は、「ART & COPY」と言われるように、アートディレクターとコピーライターがセットになって活動するスタイル。相互にスキルの異なる人同士で働くことで、互いに補い合ったり、素直に指摘し合ったりすることができます。伊藤さんは、今の芸術大学ではパソコンの所有が必須となっており、学生のほとんどがひとりで全てをやりたがろうとすることを問題視。「デザインという局面においては、ひとりでできることはない」として、ディズニーによる映画「ズートピア」に代表されるような、高度に分業化されたシステマティックな現場においても、関わる個人個人が自らの仕事に誇りを持っていることを例にあげます。

 

個人の総合力を高めることを目指しても、ひとつひとつの分野では勝てないことばかりで苦しくなってくる、とご自身の体験を振り返りつつ、何かひとつ自身をもって勝負できるものを見つけることが海外でも戦っていける秘訣だとします。

 

Wieden+Kennedyを退職後、伊藤さんは2011年にPARTYを設立。伊藤さんが大切にする「インターネットなどを使って、言語に依存しない、インタラクティブな体験のデザインを、世界に向けて。」という考え方には、「逃げてきた」とするひとつひとつの場所での体験が生きていることがうかがえます。

 

技術をそのまま技術として捉えない

 

最後に伊藤さんは、最近話題になっている「VR(仮想現実)」「AR(拡張現実)」「人工知能」「IoT」といった技術について、「羅列された情報は整理して考えるようにしたい」と述べます。例えばこれらの技術を、伊藤さんは「IoT → 人工知能 → VR・AR」という流れで捉え、それぞれ「計測・判別 → 解析・判断 → 表現」と言い換えてみせます。技術をそのまま技術として捉えないことで、発想はより広く柔軟になるはず、としてトークを締め括りました。

 

ディスカッション・質疑応答

 

参加者A:海外での仕事や賞の審査員を担当するときに、日本人であることはどういう影響がありますか?

 

伊藤さん:イギリス英語の言い回しにある「queer and wonderful(風変わりで、すばらしい)」という評価を、日本のクリエイティブは受けることが多い。首相がマリオの帽子を被ってセレモニーに出るような「変さ」は、日本らしいアプローチとも言える。言葉にすると「いとをかし」という感覚が、日本のクリエイティブを的確に示しているかもしれない。

 

トークイベントを終えて

 

「DIYカルチャー(=なんでも自分たちでする)」の強いアメリカのポートランドと、離島である石垣島の雰囲気は近いのではないか、という文脈のなかで「東京や本島を向くのではなく、独自性を持って世界に目を向けるがいいのでは」という話も出てきました。強い激励の言葉をいただいた一方で、では石垣島独自の文化をひとことで表すと?という参加者への問いかけには、誰も明確には答えられなかったのが印象的でした。

 

石垣島のクリエイティブも「いとをかし」という言葉に集約されるのか、はたまた、そこから大きくはみ出すものがあるのか。世界に目を向けると同時に、あらためて私たち自身の暮らす島や、そこから生まれるクリエイティブの特徴を探していく必要がありそうです。

 

次回の「石垣島Creative Labo 2016」は、石垣島 Creative Flagの理事である鯨本あつこさん・河尻亨一さんによるこれまでの振り返りと締め括りの会となります。

 

(開催:2016年8月26日(金) 於:ホテルエメラルドアイル石垣島 レポート:光森裕樹)

 

ICFクリエイターも彩りを添える島フェス 「Tropical Lovers Beach Festa 2016」レポ

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6/11に「Tropical Lovers Beach Festa 2016」が開催されました。8回目の開催となる今年のアーティストは、Monster Rion、水曜日のカンパネラ、TEE、MONGOL800、ハナレグミ、RIP SLYME、Rickie-G、元ちとせ、サンボマスターなど、とても豪華。

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美しい海と八重山の島々が見渡せるフォトジェニックなロケーションのもと、豪華アーティストの演奏を楽しめるとあって、会場となるリゾートホテル「石垣島 フサキリゾートヴィレッジ」には、この日のために、本土からやってきたファンや、石垣島の住民など約3,000人が集まり、にぎやかな熱気に包まれていました。

 

実は、「Tropical Lovers Beach Festa 2016」は、ICFの発起人でもあるケンヤ・マルセイユ(本名:宮良賢哉)さんらが主催する音楽フェスで、フェスのいたるところでICFクリエイターも活躍しています。

まず、会場で目に付く可愛らしいデコレーションは、大田民芸の大田さん監督のもと、木曜ロッカーズのみなさんが担当。

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風にゆられる色とりどりのデコレーションが、楽しい雰囲気をより盛り上げてくれます。

 

親子で楽しめるワークショップエリアでは、イラストレーターのpokke104さんを発見。pokke104さんは、第2回目のフェスからポスターなどのメインヴィジュアルも担当しています。

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訪れる子どもたちは、八重山諸島の鳥・シロハラクイナや、カラフルなコサージュを製作。地元の高校生ボランティアも楽しそうに、参加者の作業を手伝っていました。

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pokke104さんのワークショップは今年で6回目になるとのこと。pokke104さんは、毎年参加してくれる子どもたちがどんどん大きくなっている様子をみれることも、とっても楽しみなんだそう。

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さて、フェスの様子もちらっと。会場に2つあるステージのうち、海辺にあるビーチステージでは、観客のみなさんがアーティストの演奏にじっと耳を傾けたり、ノリノリで踊ったりと、終始盛り上がりを見せていました。

 

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そして、地元の飲食店を中心に、さまざまなフードやドリンクを提供する飲食ブースが立ち並ぶエリアで、ICFクリエイターである筆文字作家の池間真裕子さんと、池間さんの経営する「沖縄居酒屋 石垣島」のブースを発見しました。

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池間さんのお店では石垣牛丼など石垣島グルメを提供。ちなみに、池間さんが着用していた文字と絵を組み合わせた紅型染めのシャツは、池間さんのオリジナル。とても人気があるとのことで、ICFクリエイターの作品を販売している石垣市内のリノベーションホテル「ホテルエメラルドアイル石垣島」での販売も検討されているそうです。

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池間さんのブースからプールサイドにあるライブペインティング会場に立ち寄ると、ワークショップを終えたpokke104さんが、ライブペインティングを行っていました。

 

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「何を描いているのー?」と、子どもたち、若い女性、ご年配の方々など、いろんな人がpokke104さんに話しかけ、その度にpokke104さんは笑顔で答えながら、筆を進めていきます。

 

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今日の作品は、石垣島にある動植物で「サンゴの産卵」がテーマ。女性的なイメージのある月桃の花や、サンゴ礁などが描かれていきました。完成した絵は、会場のホテルに寄贈されるとのこと。

 

「Tropical Lovers Beach Festa 2016」をはじめ、島で行われるイベントにはICFクリエイターが多数活躍しているので、ぜひチェックください。

【石垣島Creative Labo 2016レポート】vol.5 「コンテンツマーケティング発想で<使われる>ための広告を」 谷口マサトさん

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「石垣島Creative Labo 2016」、第5回目のゲストスピーカーはLINE株式会社の谷口マサトさんにお越しいただきました。チーフプロデューサーとして各種広告企画をご担当。一昨年に上梓した『広告なのにシェアされるコンテンツマーケティング入門』(宣伝会議)が話題となりました。コンテンツマーケティングを展開するにあたっての秘訣や、大切にしていることをお話しいただきました。

 

コンテンツマーケティングとは?

 

ネットユーザーは、ウェブサイトに表示される広告を邪魔なものと考えてなかなか見てはくれません。そのなかで、従来の広告よりもコンテンツとしての比重を増すことで、読ませる広告、楽しめる広告として展開することが<コンテンツマーケティング>です。いわば、インターネットの普及と成長とともに進化したマーケティングと言えます。

 

谷口さんはアメリカでの調査データを用いて、スマートフォンに代表されるモバイル端末は、人々が多くの時間を割いて利用しているにも関わらず、雑誌やテレビなどの旧来のメディアと比べて広告費用が割かれていない現状を指摘します。伸びしろの大きなこの領域において、クライアントの商品やサービスをLINEやライブドアニュースにおいて、コンテンツマーケティングの手法で展開するのが谷口さんのお仕事です。

 

偏りや不足があるコンテンツの強さ

 

谷口さんは、LINEが企業に提供する複数のデジタルキャンペーンを紹介。そして、企業とユーザがLINEで「友だち」になることでスタンプを利用することができる「LINEスタンプ」を例に、コンテンツマーケティングという面から考えた場合のポイントとなる点を次のように話します。

 

第一に、宣伝したい商品そのものがスタンプになれるようなものは、広告としての効果が即時に期待できるが、そうではない商品についてはキャラクターを設けるなどの入念な準備が必要であること。そして、スタンプはユーザの感情表現に使われるものなので、企業の視点で「これが言いたい!」というスタンプを用意するのではなく、ユーザのコミュニケーションにどのように使われるかを考慮してスタンプに反映させることが第二のポイント、とのこと。「無料なのだからユーザに広く使われる」というようなものではなく、しっかりとした戦略をもって展開する必要があることが分かります。

 

谷口さんは、ネットでは一般的にバランスのとれたコンテンツよりも、偏りや不足があるコンテンツのほうが広がりやすい、とします。映画において全てを語らずに余韻を残すことが大切とされているようなことが、ネットにおいてはさらに重要度が高く、例えばある一面を切り取って強調したコンテンツは、それに同調する意見と同調しない意見の両方を生むことで、ユーザ間において自然に広がっていく傾向にある、ということです。

 

コンテンツマーケティングの成功のヒント

 

次に、LINEを通して気軽にプレゼントを送ることができるサービス「LINEギフト」の広告として谷口さんが展開した結果、150万人以上に読まれたスマートフォン向け漫画「プレゼント・ハラスメント」の事例が紹介されました(ライブドアニュース【マンガで解説】プレゼント・ハラスメントには気をつけろ!)。一般的に、商品の紹介に終始してしまいがちな広告漫画ですが、この作品は漫画として成立しており、面白いと評判になりました。

 

谷口さんは、「ネットは広告だけでは見てもらえない。一方、コンテンツだけでは儲からない」としたうえで、両者を掛け合わせたコンテンツマーケティングの意義を語ります。広告を発信する側としても、広告は嫌がられるという前提で考えていては、どうしても短い時間でなるべく大きな反応を得ようとしてしまいますが、「普通に考えても広告はできるだけ長く見てもらったほうがよく、そのほうが広いシェア(共有)につながる」という谷口さんのお話からも、ネットにおけるコンテンツマーケティングが広告のある種の理想形であることが見えてきます。

 

そのコンテンツマーケティングの成功のヒントとして、谷口さんは次の点をあげます。

 

    ・従来のテレビCMや広告の発想で、焦点を絞って内容を極力削ろうとしてしまいがち。誰しも経験があるように、ネットでは気になったことをどこまでも調べて知ろうとするもの。ネットのコンテンツは、ひとまずたくさん載せて、どれかにユーザが反応してもらえればいいという発想が大切。例えるならば、前者は銛(モリ)を使った漁であり、後者は網を使った漁と言える。

     

    ・ネットであっても動画は一般的に高コストになりがちなので、まずはネットで読める漫画をたくさん作って、そこで反応をみてから動画での展開を考える、というのは方法としてアリ。

     

    ・ネットでウケるのは基本的には「無駄な努力」。宴会芸のように、笑わせよう・振り向かせようということが全面に出ているコンテンツは見る側が、笑うまい、振り向かまいと身構えてしまう。「本人は真面目だけれど、一般的にはズレている」というのが王道。

     

    ・広告を作るというのはある種の<感情商売>。お笑いをベースとしたコンテンツは、一般的にユーザの警戒を解きやすく、また突っ込むことが野暮になるので炎上しづらい。もちろん、ユーザに笑ってもらうのが一番だが、例えばそこから<泣き>に持っていくと、そのギャップとしての感情量が増えて印象深いものになる。ただ、ユーザにとってさくっと楽しめるコンテンツであっても、そのディティールはかなり作り込んでいく努力が必要。

     

    ・コンテンツと広告ははっきり分けて提示することが大切。例えば、何らかのストーリー物を作るとして、その中の登場人物が安易に商品を薦めたりすると、ユーザに無視されるだけではなく、ときには「炎上」にも繋がる。

     

    <使われる>ための広告として考える

     

    従来のテレビCMのような<見せる>ものと、ネットにおける人々に<使われる>ための広告は大きく異なる、としたうえで、谷口さんはその変化は、かつて映画からテレビへと時代が移り変わってきたときを振り返ると参考になる、とします。映画館に出向いて座って見る作品としての映画と、お茶の間で気楽に見る娯楽としてのテレビ番組との、内容的な違いは大きいものです。時代やメディアに合わせた表現を追求する必要がある、というわけです。

     

    テレビ以上に身近な存在となったネットにおいては、情報発信者とユーザとの距離は極めて近く「友だちとの会話」感覚でアプローチしていく必要があります。映画や漫画などの各分野で培われたコンテンツ論は常に研究する必要はある、としながらも、いくらでもあるコンテンツ論から、いかに商品と組み合わせて展開していくかが工夫のしどころであり、面白いところだと、谷口さんは述べます。

     

    最後に、クライアントへの提案の仕方のポイントとして、作るコンテンツが「話題になるか」というユーザ向けの発想と、「商品に落とし込めているか」という広告主向けのふたつの視点での提案が必要であること、そして、商品の特徴をユーザにとって身近な「一般的な話」に置き換えたうえで、商品の宣伝に終止することなく「斜め上に全力を注ぐこと」でユーザとの間合いを詰めることが大切だとして、トークイベントを締め括りました。

     

    ディスカッション・質疑応答

     

    参加者A:商品がどれだけ売れたか、広告がどれくらいシェアされたのか、などの数字についてはどう考えていますか?

     

    谷口さん:単なる商品販売のためのコンバージョン率の高さを目指すなら、バナー広告などの従来の広告でいい。インターネットではまだまだ発展の余地がある、「ブランド広告」を目指している。ただ、コンテンツ広告さえ用意すればシェアされるというわけではなく、広告の露出による広くて長いリーチは必要だと考えている。シェアされるなかで、従来の広告では生み出せなかった広がりを生み出せるのが、ブランド広告の楽しいところだと感じている。

     

    参加者B:例えば石垣島をPRするとしたら、どうお考えれになりますか?

     

    谷口さん:大阪府の堺市のプロモーションを手伝ったことがあり、そこで生み出した「ハニワ課長」というキャラクターはいまでも活用していただいている。キャラクターを生み出すのは、PR単発で終わることなくその後も継続的な展開が期待されるから。また、「ハニワ課長」がゆるキャラブームのなかであえて可愛くなく、不気味ともいえる姿にしたことなど、話題になる仕掛け作りが必要。

     

    トークイベントを終えて

     

    映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の宣伝のために作られた「大阪の虎ガラのオバチャンと227分デートしてみた!」や、映画『謝罪の王様』のために作られた「究極の土下座を競う『下座リンピック』開催」など、実例紹介のたびに大きな笑い声が起こったトークイベントとなりました。

     

    会場からあがった「石垣島の美しさを伝えたいという思いは強いが、ネットとの親和性をしっかり考えてPRしたり、これまでとは違った島の見え方を考えたりするようなことはできていない」という声はまさに切実な課題。広告であるのに広告でないような、それでいて宣伝された商品への興味や親しみが自然と湧いてくる谷口さんの作品には、たくさんのヒントが含まれていたように思います。

     

    次回の「石垣島Creative Labo 2016」は、PARTYの伊藤直樹さんをゲストスピーカーにお迎えいたします。

     

    (開催:2016年5月23日(月) 於:ホテルエメラルドアイル石垣島 レポート:光森裕樹)

     

【石垣島Creative Labo 2016レポート】vol.4 「共創が生みだすクリエイティブ」 椎谷ハレオさん

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「石垣島Creative Labo 2016」、第4回目のゲストスピーカーはチームラボ株式会社の椎谷ハレオさんにお越しいただきました。IT分野に留まらない、科学技術とアートを結びつけた様々な試みで知られる同社の事業を参考にしつつ、クリエイティブで石垣島を活性化するためのヒントを参加者との対話を通して模索していきます。

 

チームラボの精神にあふれるアトラクション

 

椎谷さんは最初に、昨年12月の時点で国内・海外での累計来場者数200万人を突破した「チームラボアイランド ―学ぶ!未来の遊園地―」で展開されているアートアトラクションを紹介。

 

< お絵かき水族館 / Sketch Aquarium >

 

紙に描いた魚の絵が、実際に大きな水族館の映像内で泳ぎ始めます。泳いでいる魚には、触れたり餌をあげたりすることができる楽しいアトラクションです。

 

例えば、まだ幼い3歳〜4歳の子どもがお魚の絵を描き、もう少し大きな子どもである小学生が、映像に登場した魚に触ったり追いかけたりするなど、年齢を越えた子どもたちが一緒に遊べることがひとつのポイントだと、椎谷さんは話します。さらに、誰と遊ぶかによって毎回異なる水族館になる点も大きなポイント。これにより、同じアトラクションでありつつ何度来ても楽しむことができます。チームラボが大切にしている、共同で創造する<共創>という考え方がはっきりと伝わってくるアトラクションです。

 

< お絵かきタウン / Sketch Town>

 

こちらも「お絵かき水族館」同様、紙に描いた車や建物の絵が映像内に登場するアトラクションです。「お絵かきタウン」では、平面性を基本としていた魚とは異なり、描いた車や建物が立体性を意識した映像として登場し、それぞれの役割に応じたアクションが展開されるのが特徴です。さらに、「お絵かきタウンペーパークラフト」として、平面に描いた車の絵などを、組み立てると立体物になる展開図として出力することもできます。

 

思いついたものが簡単に映像になるだけではなく、手に取っていろいろな角度で見たりすることができる点がポイント。例えば、「将来の石垣島をこうしたい」というアイデアを出し合う際に、単に話し合うだけではなく、すばやく簡単に手に取れるようにして検討できるとよりよいアイデアが生まれるのでは、と椎谷さんは提案します。

 

< 光のボールでオーケストラ / Light Ball Orchestra >

 

様々な大きさの光るボールを転がすと、色が変わったり音が変わったりするアトラクション。頭上にあるボールに触れると空間全体の色合いを大きく変えることもできます。多くの子どもたちが思い思いにボールに働きかけた結果が、ボールたちの光と音のオーケストラとしてひとつになります。

 

このアトラクションも、誰と一緒に遊ぶかで結果が異なるのがポイントと椎谷さんは話します。「子どもには既成概念がないけれど、大人はどうしても物事をぱっと見て決めつけがち」として、石垣島の将来について考えるときにも、大人自身が既成概念で考えることをやめる必要」があり、そして、中高生のような若い人と一緒に考えていくべきだとします。

 

<若者の○○離れ>を考える

 

「専門家が偉そうにこういうものを作りたいと決めるような、<ピラミッド型のも物作り>は終わると15年ほど前に思った」 チームラボにジョインした頃を振り返りつつ、椎谷さんはそう語ります。共同で創造する<共創>というあり方が主流になってくると考えられるこれからの時代において、「全てを疑う必要がある」と椎谷さん述べます。例えば、最近の若者は、昭和の時代に育った私たちにはお馴染みのテレビのリモコンのような決まったボタンを押す物よりも、スマートフォンのように決まったボタンはなく、それぞれの状況に応じて最適化されたボタンに囲まれて育っています。同じ時代を生きながら、世代が異なれば当たり前とされるインターフェースが異なるわけです。

 

長い将来を考えると「こうしたらこうなる」という前提がない若い世代の考え方が主流になって来ます。椎谷さんは「彼らの意見を積極的に取り入れないといけない」と参加者に強く念を押します。若者の、野球離れ・ビール離れ・車離れ…などの<いかにも昭和的なモノ>とは若者が無縁であることを、参加者と改めて確認。会場からは「最近の若者はFacebookなどやっておらず、写真撮影の依頼がInstagram経由で来たりする」という体験談もあがり、もうそんな時代なのか…という驚きの声も。

 

プロセスの楽しさが求められる時代に

 

<○○離れ>として語られる若者たちですが、椎谷さんはその背景を探りながら、彼らは「結果ではなく、プロセスを楽しんでいる」と話します。例えば極端に言えば、昭和の時代においては高級車に乗るのが目的であり、そのために汗水流して働くというのが当たり前だったと言えます。

 

しかし、現代の若者にとっては、めったに乗ることのない車はステータスにはなりえず、保険代や駐車場代ばかりがかさむコストそのもの。そこから、必要なときに車を借りればいいというレンタル文化が生まれ、さらに今では個人間で車の貸し借りをするサービスも登場してきています。高いお金を払わなくても、どこかの誰かが購入した珍しい高級車を場面に合わせて選ぶことができます。その一方で、高級車を貸す側は、自分の車が誰かの役に立っているという、ステータスとは異なる満足感を得ることができます。

 

ボタンもないiPhoneがなぜこれほどまでに広がったのか、CD離れとされる若者たちはなぜ積極的に野外フェスには行くのか、様々な世の中の流れを丁寧に見つめ直しつつ、椎谷さんは「プロセスが楽しいことが、今の人には重要」と結論付けます。そして、例えば石垣島に移住者や旅行者を含めてもっと多くのひとが来て欲しいのであれば、お金を掛けて何かをするのではなく、「プロセスが楽しい」ということを鍵に考えては、と提案します。

 

都市や地域を超えた共創を目指してみる

 

石垣島は地方都市としては珍しく人口が増えていることについて、椎谷さんは「よそ者(移住者)が多いことがいい影響を与えているのでは」と推察します。石垣島のいいところ・悪いところをよそ者は既成概念なく指摘してくれる。長く石垣島にいた人と彼らによって、どんどん石垣島がカスタマイズされていく。ある意味で「共創」と呼べるものがこの島を支えているのかもしれません。

 

一方で椎谷さんは、地域にまつわる統計数字を簡単に取得することができる、地域経済分析システム「RESAS」を見ながら、将来的には石垣島も人口減になるはずと指摘。そのなかで、石垣島単独で物事を考えるのではなく、たとえば隣の竹富島と一緒に継続的に育っていけるプランを考えるなど、都市や地域を超えた共創を考えていったほうが、国や県などの予算を獲得するにあたっても、ずっと建設的で魅力的なプランになるだろうと話します。

 

また、経験の長い人や年配の世代は、若い世代に対して単に自分の時代にしか通用しない知識を伝えるだけの「先生」になるのではなく、彼らの実現したいことに耳を傾けてその実現に足りたいものが得られるように導く「マネジャー」であることの必要を説きます。

 

トークイベントを終えて

 

会場との問答を通して、答えやそのヒントを探っていった今回のトークイベントは、まさに椎谷さんが大切にされている共創そのもの。「石垣島には専門学校や大学がないため、二十歳前後の若者人口が大きく減る」という会場からの課題提案については、現代においては学校や大学のかたちもいろいろあるので実際に作ってみればいい、と椎谷さんは提案。

 

「石垣島の若者はとにかく島から出たいので、島内に学校があっても意味はない」という声には、「たとえば、島根県海士町のような離島にある高校の先行事例を参考に、島の外からでも入りたくなる学校を考えてみては」と提案するなど、島の中だけの視点ではどうしても諦めがちで小さくまとまりがちなアイデアを、大きく膨らませていきます。

 

その柔軟な考え方と共創の精神が、これからの石垣島を考えるうえでの大切なものになっていくことが参加者皆に感じられた会となりました。

 

次回の「石垣島Creative Labo 2016」は、LINE株式会社の谷口マサトさんをゲストスピーカーにお迎えいたします。

 

(開催:2016年5月22日(日) 於:ホテルエメラルドアイル石垣島 レポート:光森裕樹)

 

【石垣島Creative Labo 2016レポート】vol.3 「好きなことは自分でお金を出してやる」 十文字美信さん

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「石垣島Creative Labo 2016」、第3回目のゲストスピーカーは写真家の十文字美信さんにお越しいただきました。写真家としてはもちろん、サントリーの「金麦」や「角ハイボール・角瓶」などのCM撮影でも有名ですが、大学教授(現在は退官)、ギャラリーおよびカフェの店主としても知られ、多分野で活躍されています。十文字さんの写真やCM作品を中心に振り返りつつ、その活動の原動力や想いをお話しいただきました。

 

人生に大きな影響を与えた中島先生との出会い

 

写真家、CMクリエイター、大学教授、ギャラリーの運営と併設されたカフェの経営、そしてコーヒー豆の焙煎…と、数え上げるときりがない活動の幅について、十文字さんは「それぞれの仕事で会っている人は、私をその分野の専門家で、それがメインの仕事と思っているようです」と話します。そのため、どの分野の話が参加者に役立つかは分からないとして、写真家を目指した頃から順に振り返りつつ、おとなになって何を考えてどんなことをしてきたかを浮かび上がらせていく流れとなりました。

 

十文字さんは、自身の人生に大きな影響を与えたのは中学2年生の頃に出会った美術の中島先生との出会いだと振り返ります。中島先生は、美術家の中島けいきょう氏であり、日本画家中島清之のご子息にあたります。ある日、セザンヌが描いたコップだとして、中島先生に次のような図を見せられます(下図、黒線部)。

 

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上面は円形、底面は直線になっているコップの図に不思議がる十文字さんに、先生は「このコップの上面は見下ろしたときの形であるが、底面はそれと同じ高さに目線をおいたときの形である。つまりこの絵には<視点の移動>がある」と説明します。これが近代ヨーロッパの絵画の基本となった考え方だという説明に十文字さんは猛烈な興味を持ち、この出来事をきっかけに、中島先生を私淑するようになります。

 

十文字さんは、中島先生が移られた高校に進学して絵を習うようになります。「実は、絵を習っているといいつつ、先生の知識や感性を学んでいた」と語るように、その影響は幅広いものでした。

 

高校3年生になり「将来何をしたらいいか分からない」と相談する十文字さんに、中島先生は「だったら何もしなければいい」と言います。「それでは食べていけない」と言うと、先生は「公務員になれば何もしなくても食べられるよ」と返します。それを真に受け、十文字さんは神奈川県の地方公務員となります。

 

勢いで写真家になると宣言

 

公務員となったのちは「本当にまったく働かなかった」と語る十文字さん。しかし、働きはじめて四年目には所長が代わってしまい、新しい所長に自身の業務内容を報告しなければならなくなります。

 

「何もやってこなかったので、報告できることもないので辞めます」と告げる十文字さんは、そのとき所長室でたまたま<暗室>という文字を目にし、勢いで「写真家になる」と宣言します。退職して、夜学の写真専門学校に通い始めるも、安保闘争の激しい波のなかで学校封鎖により授業はまともに受けられない状態でした。そのため、写真専門学校も2ヶ月ほどでやめ、写真スタジオで働き始め、その後に写真家である篠山紀信の助手となります。

 

自分だったらどうするかを考える

 

カメラも持っておらず、専門的な勉強をすることができなかった十文字さんですが、助手の仕事のなかで「自分だったらこうする」「自分だったらこう考える」と業務を自分なりに工夫していきます。

 

例えば、当時はネジを回すようにしてフィルムを巻き取っていたものを、それでは時間が掛かるため、ネジ部分に棒をとりつけてクランクのようにすばやく簡単に巻き取れるようにします。また、レンズを交換するたびに、ピントを合わせるために蛇腹部分を調整するのに時間がとられた蛇腹式カメラにおいて、レンズと蛇腹の長さの対応付けをあらかじめ行っておき、篠山さんがすぐに撮影に入れるようにしたことも。そんな工夫を積み上げるなかで、十文字さんは助手となって一年ほどで篠山さんに「お前はもう辞めろよ」と独立を言い渡されます。

 

撮影の経験もほとんどないなかで、十文字さんはあと三ヶ月だけ居させて欲しいという願いを伝えます。無給で勤めた最後の三ヶ月間を、暗室に入り浸って写真の複写・現像に明け暮れ、また、レンズの使い方から露出の測り方など、カメラの基本を徹底的に学びます。

 

そして、三ヶ月が経ち、めでたく独立。とはいえ、カメラはもちろんお金もない状況でした。

 

作品の裏にある明確な意図と飽くなき探究心

 

写真家となった十文字さんは精力的に活動を開始します。友人を撮影した一連のシリーズを紹介しつつ、なぜそれを撮ったのかについては「自分で自分を撮ることはできないことはないが友達というものは自分となんらかの共通点があるはず。友達を撮れば自分の何かが分かるのではないかと思った」と述べます。

 

また、24歳の頃に取り組んだ、被写体の顔がフレームアウトされて写っていない一連のシリーズについては、私淑していた中島先生より、見えることよりも見えないことのほうが重要だと教えられたことを振り返りながら、その撮影意図をこう語ります。「写真が見えているものしか伝えられないのであれば、それは一生の仕事ではない。見えないものをどうすれば伝えられるかが、自分の写真を撮りながらやるべきことだと思った」 この試みは日本のなかでは評価されませんでしたが、J・シャーカーフスキー氏の目に留まり、ニューヨークの近代美術館での展覧会「ニュー・ジャパニーズ・フォトグラフィー」に出展されます。

 

友人を撮影した時とは真逆の発想で、「同世代で自分とは正反対の生き方をしている人はどのような人物か」と考えた結果、学習院大学の社交ダンス部員を撮影したシリーズや、自身が近眼であることから「ピントが合わないということはどういうことか」と考えて撮影した「近眼旅行」シリーズ、そして、「飛び込み自殺をする人が最期にみる光景は何か」と考えて、実際に飛び込みの名所でカメラを竿に括りつけて撮影したシリーズなど、作品のひとつひとつに十文字さんの明確な意識と探究心が浮かび上がります。

 

<本当>だと思っていることに嘘をつかない

 

毎回テーマがあり、毎回独自の切り口を持つ作品の共通点は何でしょうか。

「僕がこころがけているのは、自分が本当に思っているのか、感じているのかということ」と十文字さんは振り返ります。「人から聞いたことでも、本当かどうかを自分で確かめたくなり、また、自分が本当だと思っているからこそ自信が湧く。人が何と言おうと気にはならない」。そう考える十文字さんは、「将来は好きなことをやって食べられるようになりたい」と言う学生には、「君、社会はまったく逆だよ。もし、自分が好きなことをやりたかったらお金を払いなさい。」と話してきました。お金をもらえるというのは誰かに頼まれているからに他ならず、自分のやりたいことは身銭を切ってやることになります。

 

しかし、そうしてでもやらなければならない大切なことだというニュアンスが含まれたメッセージです。そうしているうちに、だんだんお金が入ってくるかもしれないが、結果的にそうなっただけであり、最初からそのようなことは目標としてはいけない、と話す十文字さんは、会場からあがった「なぜ仕事を頼まれるようになったのか?」という質問に、「それは、自分の好きなことを、お金を出してやっているからではないですか」と答えます。

 

当然ながら、頼まれたものを受ける以上、仕事も全力で取り組みます。CM撮影においても「例えば、この女優さんは好きじゃないけれど仕事だから…」というのは絶対にいけないことだと十文字さんは語ります。「仕事を引き受ける以上、その女優さんの魅力を見つけ出し、全力で好きにならないといけない」とする十文字さんは、自分でお金を出して取り組む作品同様、仕事においても自分にとって<本当>だと思っていることに嘘をつかずに取り組まなければならないよ、と参加者にメッセージを送りました。

 

トークイベントを終えて

 

ひとつひとつの作品の背景に十文字美信独自の視点があり、その作品に取り組まなければ気が済まないという気持ちがあったことが繰り返し熱く語られたトークイベントとなりました。クリエイターとして長く地道な活動を続けていると、ともすれば、好きなことで食べていくにはどうすれば…という思いを抱きがちになりますが、「好きなことは自分でお金を出してやる」という十文字さんの言葉は、参加者たちに特に強く響いたのではないかと思います。作品とは何か、仕事とは何か。そしてそのいずれにも共通する、自分にとっての<本当>とは何か。トークの最後に、大きな宿題を与えられたような気持ちになりました。

 

次回の「石垣島Creative Labo 2016」は、チームラボ株式会社の椎谷ハレオさんをゲストスピーカーにお迎えいたします。

 

(開催:2016年3月7日(月) 於:ホテルエメラルドアイル石垣島 レポート:光森裕樹)

【石垣島Creative Labo 2016レポート】vol.2 「喜んでもらイズム」 中島信也さん

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「石垣島Creative Labo 2016」、第2回目のゲストスピーカーはCMディレクターの中島信也さんにお越しいただきました。原始時代を舞台にした日清食品カップヌードルのCM「hungry?」シリーズは、誰しもが知るところ。中島さんが関わられた数多くのCMを振り返りながら、楽しいトークが軽快な調子で進んでいきます。

 

おいたち〜The BEATLESに憧れて〜

 

1959年福岡県に生まれた中島さんは、父親の仕事の都合ですぐに大阪に引っ越します。「モテたかったが、足が遅いのは小学生にとっては致命的だった」と自身の少年期を懐かしそうに振り返ります。

 

様々なグループバンドに憧れるなかで、高校時代には「THE BEATLES」に強く惹かれバンドを結成することも。音楽活動に力を注いでいましたが、ジョン・レノンがアートスクールに通っていたことと、父親の勧めから武蔵野美術大学に進学。

 

その後、就職活動のなかで受験した広告代理店のクリエイターから「君はデザインのセンスはないけれど、プレゼンがうまいのでテレビ業界に行ったほうがいい」という助言を受け、映画やテレビ番組・CMを制作する東北新社に入社します。

 

<改造人間・中島信也>の誕生

 

勝手の分からない番組・テレビCM製作業界のなかで、中島さんが心がけたのは「とにかく、怒られないこと」。夢とか大志は棚上げにして、先輩の顔色をうかがいつつ、とにかく自分自身の「改造」に勤めたことを強調します。

 

CMディレクターとなったのちもその姿勢は変わらず「まさに改造人間・中島信也だった」と当時を振り返ります。もちろん、中島さんが伝えたかったのは、何があっても平身低頭であれ、ということではなく、まずは何事も自分の課題として素直に学んでいこうよということ。中島さんの話しぶりに笑いの絶えない参加者たちにも思い当たることがあるのか、頷く姿も多く見られました。

 

ひたすら自身を<改造>してゆくなかで入社から10年ほどが経ちます。そして、ディレクターを勤めた日清食品カップヌードルのCM「hungry?」シリーズで、日本人として初のカンヌ国際広告祭グランプリを受賞。ありがたいことに仕事はたくさんくる、しかし「自分には、できないことだらけであることを実感した」と言う中島さんが頼ったのが<人の力>です。

 

<喜んでもらイズム>を大切に

 

ひとつのテレビCMを作成するにも多くの人が関わるため、中島さんは自身の仕事を<お願い稼業>だと話します。

 

カメラマンや大道具さん、メイクさんに喜んでもらえる監督であるためにはどうすればいいかを常に考えて行動します。喜んでもらえると、まだ若い自分の意見でも聞き入れてくれる。そして、意見を聞き入れてくれたらその恩は忘れないでおく。中島さんは、この<喜んでもらイズム>をずっと大切にしてきており、それは自分よりも若いスタッフとの仕事が増えた今でも変わらない<人生の柱>だと述べます。

 

そして、クリエイティブな仕事がしたいが、どうにも自分には個性がないと思っていたとしても、この「喜んでもらイズム」の精神は役に立つはずと、参加者の背を押すように助言します。

 

クリエイティブが心をプラスに動かす

 

広告というものは多くの人が関わる<作戦>のようなものです。最終的な目的は、製品を買って欲しい・イベントに来て欲しい・企業にいい印象を持って欲しいなどの具体的なものになりますが、「人々に触れることになる広告がまず目指すことは、心がプラスに動くこと」と、中島さんは話します。

 

テレビCMであれば、それを観た人がまずは、かわいい!たのしい!わかる!やばい!などの、何かを感じてくれること。 それが、心がプラスに動くことであり、<喜んでもらイズム>が世の中や人々に発揮された結果とも言えます。中島さんは、クリエイティブはこの広告という大きな作戦においての入口となる部分で大きく作用し、人の心をプラスに動かすものとします。

 

クリエイティブに大切なもの

 

クリエイティブは、ビジュアル・音・言葉など、学問で言えば美術・音楽・文学といった芸術の領域にあるもので、当然ながら「創造力」が大事。その質を高めていくことで、作品に接する人々に喜んでもらうことができます。しかし、それは決してテクニックを磨くことだけでできるものではないと、中島さんは注意を促します。

 

作品を通して人とのコミュニケーションを取るということは、「見ず知らずの人にお声がけをする」という繊細な行為に他なりません。中島さんは、そこで大切になってくるのが「想像力ならぬ<想像心>」だと述べます。こんなことをしたら相手はどう思うだろう? 相手は傷ついてしまうだろうか? 喜んでくれるだろうか? そんな風に、相手の心を想像する心が<想像心>です。その根底には、他者へのおもいやりがあり、どんなデザインや表現でもそのおもいやりを大切にして下さいと、中島さんはトークを締め括りました。

 

ディスカッション・質疑応答

 

参加者A:クリエイティブに理解がないクライアントは、どうすれば説得できますか?

 

中島さん:おなじ目標が持てるかが大事。クライアント側はお客さんに来て欲しい、であったり、買って欲しいと思い、一方で、クリエイター側はとにかく面白い物を作りたいもの。例えば、クライアントにはこれまでの方法では駄目ですよね、としっかり話して理解してもらう。両者を繋げるのが「喜んでもらイズム」です。

 

参加者B:おなじ目標を持つには、信頼関係が必要かと思いますが、その構築方法はありますか?

 

中島さん:志(こころざし)が大切かなと思います。人間ですから足りないものはいっぱいありますが、本当はこんな世の中だったらいいな、こんな人間だったらいいな、ということを照れずに話し、思い続けるということが大事だと思います。

 

参加者C:広告というものの評価はどう決まるものでしょうか? 数字や斬新さなど、いろいろな軸があると思いますが。

 

中島さん:広告主は数字ですね。ただ、ある商品が売れたとして、商品そのものが良かったからであったり、CMを流す量が多かったからであったり、CM単体での効果は掴みづらいものがあります。

 

河尻さん(司会):Cさんが関わる現代アートの分野ではどうですか?

 

参加者C:評価方法がないのが現代アートだとも言えるかと思います。評価方法自体を自分で決めていくことも。

 

中島さん:物が売れるかどうかということをはずして評価できるのではないか、という幻想を僕らは持っている。面白いCMは他のアート作品と同じく、人間にとっては自分を取り巻く素敵なものになりうるのではないか、という想いがあって、経済の面だけではなく文化をかたち作るという面もあるのではないかと信じています。

 

河尻さん:アートは自分で自分の課題を解決していき、広告やデザイン制作はクライアントの課題を解決していく。それでは片方しかなく、私たち(広告批評家)の立場では「批評性があるか」も大切。例えば、中島さんの日清カップヌードルのCMは、飽食のバブルの時代に「hungry?」と問いかけた。そうすると、「実は、自分はこの時代のなかで<腹が減っていた>のではないか?」と気付かされる。だからこそ、今でもそのCMは古びていない。課題解決と批評性のふたつの評価軸を天秤にかけて広告を見てきた。

 

トークイベントを終えて

 

テンポよく進んでいくプレゼンテーションに魅せられながらのトークイベントとなりました。時折はさまれる中島さんが関わったCMは、話の筋を補強する例証でありながら、テレビ番組の途中ではさまれる文字通りのCMのようでもありました。最後に中島さんからいただいた「あたたかい島の影響もあるかもしれないけれど、石垣島のクリエイターには作品を見て欲しい、お互いに見せ合いたいという雰囲気があって、それがこれからを拓いていくのかなと思います」というメッセージは、参加者のこころに強く響いた様子でした。

 

次回の「石垣島Creative Labo 2016」は、写真家の十文字美信さんをゲストスピーカーにお迎えいたします。

 

(開催:2016年3月6日(日) 於:ホテルエメラルドアイル石垣島 レポート:光森裕樹)

【石垣島Creative Labo 2016レポート】vol.1 「無駄の大切さ」 嶋浩一郎さん

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昨年に続いての開催となる「石垣島Creative Labo 2016」、第1回目のゲストスピーカーは「株式会社博報堂ケトル」代表取締役社長・共同CEOでクリエイティブディレクターの嶋浩一郎さんにお越しいただきました。

嶋さんは「人の事例は、もうその人がやっちゃっているものなので(紹介しても)意味がない」として、「企画をするときに大事なこと」「企画するときのスタンス」を軸に話していきたい、とトークを切り出しました。そして、博報堂ケトルで働く者として、企画の際に大切にしていることを3点挙げました。

 

<企画をするときに守りたいこと>

 

  • 1.一人で全部やること
  • 2.ニュートラルに発想すること
  • 3.人の新しい感情、特に新しい欲望に気付くこと

 

それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。

 

1. 一人で全部やること

 

「一人で全部やる」とは、イベントの企画・実行でも、グラフィックデザイン制作でも「ちゃんと責任を持って一人の人がディレクションをする」ということ。 当然ながら、実際のイベント実行やデザイン制作には多くの人が関わり、具体的な作業を誰かにお願いすることになります。

 

この言葉の意図は、全ての「作業」を自分でするということではなく、ターゲットとなる人たちが何を思っているかをきっちりと捉えて、それに応えるものができるように責任を持ってディレクションをする、ということ。

 

実際の作業はそれを専門とする様々なプロに任せても、制作の進行から完成まではしっかり関わっていくわけですから、「仕事の進め方はマルチタスクとなってくる」と、時代の流れに沿った働き方の変化を嶋さんは強調しています。

 

2. ニュートラルに発想すること

 

「ニュートラルに発想する」とは、既成概念やこれまでの成功体験はいったん脇に置いておき、課題解決のためには何がいいのかということをゼロベースで考えるということを意味します。

 

例えば、ある商品を売りたいという依頼の場合、普通に考えるとこれまでの成功体験から「テレビCMを作ればいいのでは」となります。そこで「でも、他のことをやったほうがもっと売れるんじゃないか」と考えることが大切です。

 

予算の少なさや期間の短さ、あるいは、クライアントの無理解について不平を言う人は多いものですが、嶋さんは「結局、同じ条件のなかでみんな戦っているはず」として、「自分が持っている時間とリソースと予算をいかに<編集>して課題解決するか」に注力できる人が「いい仕事をする人」の条件だと述べました。

 

3. 人の新しい感情、特に新しい欲望に気付くこと

 

人の欲望を捉えるということは、マーケティングの分野では「インサイトを捉える」という言い方になります。「インサイト(insight)」は英語で「洞察」を意味する言葉。深くその人の欲望を洞察していき、本当はどういうことを望んでいるのか、本音としては何を要望しているのか、ということを探っていくことが大切です。

 

言葉にすると簡単なようですが、嶋さんは「人の欲望を言い当てるのはすごく大変」と述べ、欲望に関する人の特性を2点あげています。ひとつ目は、「人は意外と不器用で、自分が何をしたいかをそれほど言語化できていない」こと、ふたつ目は「人は都合がいいもので、自分が欲しかったものが実際目の前に出てくると、そうそうこれがずっと欲しかったのだ」と思うこと。

 

このふたつの特性の架け橋をうみだすことが「企画」の醍醐味と言えます。 嶋さんは、運営する書店「本屋B&B」を例に、顧客が言語化できている「欲しい物(=欲望)」については「Amazonで買ってもらって全然問題ない」とされます。

 

「本屋B&B」が提供するのは、「実はこの本が欲しかったのでは?」「実はこれに興味があったでしょう」といったことを先回りしてあげることだとし、すでに経済化した欲望にしか答えられないインターネットの世界に対する強みを大切にしている、と述べました。

 

<無駄>から生まれるイノベーション

 

嶋さんはいつでもポストイット(付箋紙)を持ち歩いており、本を読んでいて知らないことが書いてあると、必ず印をつけたうえで、ノートにまとめています。様々な分野の「雑学」とも言えるメモをいくつかを紹介したうえで、「一見無駄な情報は、企画の立案にとても役に立ちます。イノベーションって関係ないものと関係ないものとがくっついた時に必ず起きるもの」と語ります。

 

インターネットが登場してから「すぐに直接的な答えを求める人が多くなった」と懸念を示しつつ、「迂回していろんな物を見ながら結論を出せる方が、無駄がいっぱいあっていいかなと思っています」とトークのまとめに入ります。

 

嶋さんが参加者に呼びかけたのは、なんと「名古屋人になること」。丁寧にセレクトされた雑貨や書籍をまるごと展示する「ヴィレッジバンガード」が名古屋発祥であったり、スガキヤのフォークとスプーンを一体化させた独自の食器の発明があったりなど、名古屋には既存概念にとらわれない発想が多く見られ、企画のヒントが詰まっているとのこと。

 

名古屋人ならどうするか、そんな視点からあらたな問題解決やクリエイティブが生まれてくるかもしれませんね。

 

ディスカッション・質疑応答

 

参加者A:いい無駄と、悪い無駄のような区別はありますか? 無駄なら、どんな無駄でもいいのでしょうか。

 

嶋さん:基本的には無駄に区別はなく、がんばれば目に見える全てのことはメッセージというか、何らかの役に立つと考えています。

 

 

参加者B:得た情報を全て書き留める必要がありますか?

 

嶋さん:僕にとっては、ポストイットを貼り付けたり、メモにまとめたりするのが合っているだけだと思います。義務にしてしまうと人には良くないので、単に楽しいからやってるだけですね。僕には、そういう付箋やメモるのが合ってるだけで、人によって全然違うと思う。

 

参加者C:全部一人でやる、というお話がありましたが、その一人以外はどういう意識で関わるものでしょうか?

 

嶋さん:広告の仕事はチームでやる仕事なんで、時には1,000人が関わるのですが、ディレクションをする、つまり指示をする人はあくまでも一人、という意味ですね。ただ、関わっている人の中に「この仕事はオレがやったんだ」という人がいっぱいいる仕事は、いい仕事だと感じています。みんなが「自分の仕事」だと言っているような状態ですよね。

 

 

トークを終えて

 

名古屋人になること――。この例えひとつをとっても、嶋さんが収集された「雑学」が無駄なく活かされており、「無駄」の大切さにおおきく頷かせられる会となりました。 石垣島でクリエイティブ活動する参加者の中には、依頼された仕事をなんとか完成させることに追われ、クライアントにとっての真の「問題解決」を深く追究することの難しさに直面することも多いはず。「企画をするときに絶対に守ろうとしていること」の3項目も、そのひとつひとつがずっしりとした重みのある言葉として参加者たちに受け止められたことと思われます。

 

次回の「石垣島Creative Labo 2016」は、CMディレクターの中島信也さんをゲストスピーカーにお迎えいたします。

 

(開催:2016年1月31日(日) 於:ホテルエメラルドアイル石垣島 レポート:光森裕樹)

pokke104個展「あそびいろ」

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沖縄、南国の植物や生き物の色彩は生命力を感じます

展示会のテーマは、その色彩をつかって色であそぶという意味を込めて「あそびいろ」にしました

今までの発表した作品も含め、原画とグラフィックの作品を展示販売します

今回は新作として、様々な立体物にペイントし一点もののアート作品も用意しています

是非、ホテルエメラルドアイル石垣島のギャラリーにあそびにきてください

 

日程/2016年1月30日(土)〜2月29日(月)

時間/10時〜19時(最終日は〜15時)

場所/ホテルエメラルドアイル石垣島 2Fギャラリー

入場無料

 

pokke104  http://creativeflag.com/creator/pokke104-2/